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「なくすのもったいない」元貴金属店 チャレンジショップや貸しスペースに“変身”

「なくすのもったいない」元貴金属店 チャレンジショップや貸しスペースに“変身”

 諏訪市のJR上諏訪駅に近い国登録有形文化財の「三村貴金属店」が、築約100年の店舗を後世に残そうと、空きスペースを改装し、複合施設を開業する。一時は更地化の案が出たものの、店主の三村昌暉(まさてる)さん(76)の義理の息子で会社員の土橋賢太郎さん(44)=茅野市=が「なくすのはもったいない」と一念発起。期間限定で営業する「チャレンジショップ」や貸しスペースを展開する。29日に改装工事が完了し、4月22日に飲食店がプレオープンする。

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はり・柱・吹き抜けはそのままに

 三村貴金属店は1928(昭和3)年築。空きスペースは間口約6メートル、奥行き約16メートルの縦長の構造で、貸店舗を前提に貴金属店と壁を挟むようにして同時期に造られたという。どちらも西洋風に装飾した「看板建築」が特徴で、2011年に登録有形文化財に指定された。

 貸店舗ではこれまで八百屋などが営業し、14年からは諏訪市がまちづくり拠点として利用。ただ20年に空き店舗になり、土橋さんは貴重な建物を残したいと、建物を維持する方法を模索してきた。観光客が店舗の外観を撮る姿を見ており、店舗の価値に自信はあった。

 「せっかくなら見るだけでなく滞在できたらいいな」。そう考えて知人らに相談し、約2年かけてチャレンジショップや貸しスペースなどの具体的な構想を練った。改装工事は「スワテック」(諏訪市)に依頼。スワテックの前身の会社は当時の三村貴金属店を設計、施工している。

 はりや柱、5・5メートルの吹き抜けはそのまま生かし、天窓から光が差し込む空間にした。1階は飲食店によるチャレンジショップを想定し、冷蔵庫やシンク、こんろなど本格的な調理設備を設置。2階は菓子の製造や販売ができるようオーブンや製菓道具を備えた部屋や自由な使い方ができる貸しスペースにした。

 2階の貸しスペースは諏訪地域の工芸作家による作品などを並べる構想を描く。土橋さんは「地域のためになると思い始めた事業。わくわくする場所にしたい」。三村さんは「お客さんに喜んでもらえたらこれ以上の喜びはない」と期待している。(2024年3月30日配信)