2021.09.30
中部横断道、山梨―静岡全通 信州からも熱い視線
中部横断道の山梨県―静岡県間の全線が8月29日に開通し、山梨県境の諏訪地方からも静岡へのアクセスが向上した。輸送時間短縮を喜ぶ鮮魚卸や、諏訪地方の自然が静岡県民にニーズがあるとみて宿泊プランを打ち出す観光業者も。新型コロナで経済が落ち込む中、全線開通効果が十分発揮される日を待ち望む関係者は多い。
■食材仕入れ 効率化に期待
静岡市の中央卸売市場から仕入れている下諏訪町の鮮魚卸「丸松水産」は30日、開通したばかりの中部横断道を早速利用し、マグロやシマアジ、ホウボウなどの魚を運んだ=写真。下部温泉早川IC―南部IC間の開通前に通っていた峠道に比べ、片道30分短縮。責任者の松浦志保さん(42)は「作業効率が上がり、より多くの注文を受けられる」と期待。以前は峠道でトラックが鹿にぶつかるトラブルもあり、ドライバーの負担軽減にもつながるとみる。
同社は仕入れた魚を県内の飲食店やホテルに卸しているが、新型コロナの影響で受注は半減した。松浦さんは「朝取れの良い魚をトラックに目いっぱい積んで持ってこられる状況に早く戻ってほしい」と願った。
■ツアー期待 観光誘客を模索
蓼科東急ホテル(茅野市)は、静岡県民対象の宿泊プランを発売中。宿泊料金を従来より8%程度割り引いた上、館内のレストランや土産店で使える合計1500円分の無料利用券を付けた。同県出身の宿泊支配人、森山敏雄さん(43)は「静岡県民にとって蓼科高原の標高1300メートルの自然環境は魅力がある」。紅葉シーズンにプランの予約が入り始めているという。
全線開通で峠道を通らずに済むため、ツアー客を連れた大型バスもストレスなく諏訪地方を訪れることができると見込む。現在、同ホテルの客で静岡県からは1割に満たないが、「新型コロナ収束を見据えてツアーを企画し、静岡県からの客を2割程度に引き上げたい」と意気込む。
山梨県と接する富士見町は、全線開通で入笠山や八ケ岳連峰の山岳観光、スキーの来客が増えると予想。新型コロナの経済対策で町内のパノラマリゾートと高原リゾートの一部施設を無料開放する事業では本年度、対象に静岡県民を追加した。現在は感染拡大の影響で事業自体を見合わせているが、植松聖久産業課長は「静岡方面からの誘客に向け、新たな計画を立てたい」と話している。(2021年9月3日、信濃毎日新聞)