移住したくなったら

松本市への移住相談増加 リモートワークへの注目が追い風

松本市への移住相談増加 リモートワークへの注目が追い風

 新型コロナ下でリモートワークに注目が高まっていることを追い風に、首都圏などからの松本市への移住相談の件数が増加している。市担当者は「東京からのアクセスの良さと、自然との距離感のバランスが評価されている」と分析。感染拡大で首都圏を行き来する形でのPR活動は難しいが、インターネットなどを活用して市の魅力発信に力を入れる方針という。

 市移住推進課によると、市への移住相談の件数は2018年度は315件、19年度は492件、20年度は541件と右肩上がり。本年度はまだ統計をまとめていないが、増加傾向が続いている。市への相談を経て実際に移住した人は、把握しているだけで18年度は18世帯38人、19年度は42世帯67人。20年度は22世帯50人いた。

 市に相談した一人で、20年1月に東京・浅草から移住した片岡由梨香さん(43)は、同市大手の空き家を改装してキャンドル制作の教室兼店舗を運営。香川県出身でフリーランスの出版デザイナーとして働いていたが、12年に東京スカイツリーが開業してから周辺に観光客が増えて「人混みに疲れてしまった」。数年前から移住を考え始めた。

 松本は旅行で訪れたことがあり「個性豊かな店が多い」印象があった。19年秋に市主催の移住検討者向けのツアーに参加し、移住後のイメージを膨らませた。自然が身近にある一方、買い物に不便しない利便性があり、東京に日帰りできる地の利も決め手となった。来客とゆったり過ごす時間や松本城の周りを愛犬と散歩するのが楽しく、「移住は大成功」と笑顔で話す。

 市は移住政策に特化した「まつもと暮らし応援課」(現移住推進課)を19年4月に設置し、首都圏での移住相談会の開催に力を入れた。同年7月には東京・有楽町にある全国の自治体が移住情報を発信する「ふるさと回帰支援センター」にブースを新設。高橋健課長補佐は、コロナ下でも相談件数が増えたことに「感染が広がる直前に情報発信の態勢を強化できたことが奏功している」とする。

 コロナ前は移住後の就職の相談が多かったが、最近は企業でリモートワーク導入が進み「インターネット環境さえあればいい」との声が増加。交通網が集中して首都圏に出やすい市中心部を希望する人もいれば、自然豊かな田園地帯を望む人もおり「ニーズが多様化している」と高橋課長補佐。動画投稿サイトユーチューブの公式チャンネル「まつもと暮らし」で紹介動画を公開するほか、オンラインの移住相談に対応することで「ニーズに応じた情報提供をしたい」と意気込んでいる。

 写真は、キャンドル店を営むなど充実した松本暮らしを語る片岡さん(2021年9月22日、信濃毎日新聞)

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1873(明治6)年に創刊した長野県で日刊新聞を発行する企業です。きめ細かい取材網を生かした公正で迅速な報道に努めてきました。紙面づくりや多彩なイベントを通じた読者との双方向性を大切にしながら地域の産業や文化の振興も目指してきました。販売部数は約43万9000部(2020年4月)。県内シェアは70%超。地域に親しまれ、信頼される長野県民の主読紙として、人と時代をつなぐ仕事に取り組んでいます。