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山形→小諸260キロ チョウの旅 糠地郷蝶の里山会が確認

山形→小諸260キロ チョウの旅 糠地郷蝶の里山会が確認

 小諸市糠地(ぬかじ)の「ぬかじバタフライガーデン」に20日、山形県・蔵王連峰付近で8月15日に捕まえられマーキングされたアサギマダラが飛来した。ガーデンを整備する「糠地郷蝶(ぬかじごうちょう)の里山会」(大島康紀代表、会員約40人)の顧問宮坂繁さん(73)が確認した。直線距離は約260キロあり、北からの飛来としてはこれまでの青森県・八甲田山に次ぐ記録だという。10年ほど前からアサギマダラが好む蜜を出すフジバカマを増やしてきた成果が出た形だ。

 建築士の宮坂さんが10年ほど前、自宅隣の畑約1600平方メートルを借り、チョウが生息できる環境を整えたガーデンを始めた。40年以上、チョウの標本作りや撮影を続けている宮坂さんは、有料展示室(一般200円、中学生以下50円)を自宅に増設するほど。ミヤマカラスアゲハやオオムラサキなどの標本70ケースをきれいに展示している。

 宮坂さんは熱帯を生息域とするツマグロヒョウモンを2004年、特定外来生物のアカボシゴマダラを17年に小諸市内でいち早く撮影。大学の研究者からも注目された。

 自然を愛する仲間の輪が広がり、17年にはチョウが生息する里山づくりを進めようと「糠地郷蝶の里山会」が発足。アサギマダラの生態調査や絶滅危惧種が生息しやすい環境整備に取り組んでいる。19年からは「一坪花壇」制度を設け、市内外から参加する十数の個人・団体が手入れに協力。当初の3倍の約5千平方メートルまで広がったガーデンには、芝でチョウをかたどった広場をつくり、遠くに富士山を望む場所には看板を設けた。

 ガーデンに年間数千匹が飛来するアサギマダラについて、同会は全国にまたがる調査グループに参加し、各地での捕獲や記号を付けるマーキング、再捕獲の情報をメーリングリストで共有。移動の直線距離や所要日数、チョウの状態などを報告し合っている。大島代表によると、糠地からは19、20年に鹿児島県・喜界島への飛来も確認されているという。

 絶滅危惧種ミヤマシジミも、食草のコマツナギを植えて増やしている。大島代表は「これからも仲間とともに自然豊かな里山を守っていきたい」と話している。(2021年9月23日、信濃毎日新聞)

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