2022.03.24
仏産ワインに負けないワインを 高山村に移住 夫婦設立のワイナリーの品が好評
高山村のワイナリー「ヴィニクローブ」のワインが、県内外の愛好者の間で好評だ。2019年に元会社員の倉田康博さん(64)と妻の裕子さんが設立。原料のブドウの栽培から醸造、販売までを手掛け「流行に左右されない味を追求したい」(康博さん)という。高品質なワインブドウが育つ村の風土に根差し、本場フランスに負けないワイン造りを目指している。
21年11月に初めて赤ワイン(750ミリリットル、税込み4180円)を販売。19年にワイナリーの畑で収穫したブドウ「ピノ・ノワール」を使って醸造し、2年ほど寝かせた。滑らかな飲み口で、繊細な香りと優しい酸味が特徴だ。
約2300本を生産。他のワイナリーと比べて多くはないが、味わった愛好者のSNSがきっかけで関心を集め、年が明ける前に在庫がなくなった。卸先の東京の酒販店から追加注文も来たが、断らざるを得なかった。こうした反響に康博さんは「正直びっくりしている」と話す。
富山県出身の康博さんは銀行や製薬会社で働いた。ベルギーやフランスに赴任した際、休日はフランスのブルゴーニュやボルドー、イタリアなど各地のワイン生産地を訪ね歩いた。自分の手でワインを造りたいとの思いが高まり、仕事の合間を縫って本などでワインの生産や流通について独学。14年に退職し、本格的に挑むことにした。
15年に長野県主催のワイン生産アカデミーに参加。土壌作りや、アルコール度数や糖度の分析方法といった基礎を学んだ。国産ワインを飲み比べた中で、高山村産ブドウの品質の良さに魅力を感じ、16年に移住。2ヘクタール弱の畑を借りてブドウの苗を植え、生産者の道を歩み出した。
兵庫県出身の裕子さんは都内で働き、週末に長野に通う生活だったが、17年に仕事を辞めて移住。自身も研修を受け、ワイン造りに加わった。
味の好みから、栽培するブドウはピノ・ノワールと決めていた。皮が薄く、房に実が密集しているため、こすれて破れやすい。日本は湿度が高いこともあり、栽培は難しいという。だが「その分、挑戦しがいがある」と裕子さん。育ち具合を毎日確かめ、収穫時は手摘みで実を選別する。
18年は村内の農家からブドウを仕入れて試験的にワインを醸造。19年に醸造免許を取得し、ワイナリーが完成。本格的に造り始めた。
ラベルはアニメーションの原画のように、踊るバレリーナの映像を一こまずつ切り取った絵柄を採用。デザインはボトルごとに全て異なる。発案した裕子さんは、バレエ、ワインとも「欧米発祥で、日本に移植されて発展した」とし、ラベルには「その歴史を重ね合わせた」と話す。
ワイナリーでは現在、店頭販売用のスペースを整備中。中2階は、善光寺平や北信五岳を窓から眺めながらワインを試飲できるようにする予定だ。裕子さんは「高山村の風土に合った栽培方法を見いだし、理想のワインを形にしたい」と語った。(2022年3月5日掲載)