移住したくなったら

「山」と「サウナ」。遊びと暮らしを混ぜながら暮らす、移住者ふたりの長野論

「山」と「サウナ」。遊びと暮らしを混ぜながら暮らす、移住者ふたりの長野論

「長野は、都会と比べて刺激が少ない」。

そういった声は少なくありません。しかし、中には長野で自分らしい日々の楽しみ方を見つけて、”心地よい刺激”を楽しんでいる移住者もいるんです。

そこで、今回は、山や自然に惚れて移住した2人のゲストによるトークセッションを実施。長野ならではの「遊びと暮らしを混ぜた生き方」について伺います。

*本記事は、2023年1月29日に開催された長野県主催の県内自治体・企業との個別相談イベント「ナガノのトビラ」内のトークセッションを記事化したものです。

プロフィール
野田クラクションべべー(写真左)
サウナビルダー/「The Sauna」支配人
東京都世田谷区出身。東京のWeb制作会社の株式会社LIGに入社後、アメリカ横断、日本一周を達成。2018年に信濃町に移住し、クラウドファンディングで支援を集め「The Sauna」をオープン。サウナを通して、サウナー(サウナ好きの人)を増やす活動を行っている。

やぎちゃん(写真中央)
登山YouTuber
登山は大学時代より始めて11年目。20代前半は北海道から屋久島までを巡り、ピークハントや長期縦走を楽しむ。2020年2月、山やアウトドア・自身の生活について発信活動を開始、会社員をしながら毎週土曜夜8時に動画を投稿。SNS総フォロワーは10万人以上。アンバサダーを務めるのは、OLYMPUS/OM SYSTEM、駒ヶ岳ロープウエイ、登山アプリ「YAMAP」等。
2022年4月に長野へ移住。大町市観光プロモーションの企画、長野市の企業とコラボしてトレイルバーを開発するなど地域での関わりを深める。夢は〈山好きのアジトを作る〉こと。近い目標は、海外のロングトレイル!

登山YouTuberと人気サウナビルダーが長野に移住したワケ

藤原
今日はよろしくお願いします。ファシリテーターの藤原です。まずは、ゲストのお二方の自己紹介をお願いします。
やぎちゃん
はじめまして。登山YouTuberのやぎちゃんです。私自身、2022年4月に長野市に移住したばかり。まだまだ新鮮な気持ちで長野生活を送っているところです。

私は主に YouTube チャンネル「やまくっく・やぎちゃん」を運営したり、山にまつわるモデルや講演などの仕事をしたりしています。2023年からは、長野県の移住総合Webメディア『SuuHaa』の副編集長も任せてもらうようになりました!
藤原
やぎちゃんは YouTube チャンネルでも移住のリアルをたくさん発信しているので、ぜひみなさんも視聴してみてください。
やぎちゃん
ぜひぜひ〜!
▲やぎちゃんのYoutubeチャンネル「やまくっく・やぎちゃん」。
やぎちゃん
私が長野に移住したきっかけは、山が好きな人や移住したい人が集まって、情報交換できる“アジト”をつくりたいと思ったから。新卒入社した会社で3年間勤めたあと、移住するために長野県に拠点を持っている人材系会社へ転職。4年間働いたあとに「そろそろ長野に転勤したいです!」と伝えて、仕事を変えずに長野県へ移住してきました。
藤原
ありがとうございます。次は野田クラクションべべーさん、よろしくお願いします。
べべさん
こんにちは。野田クラクションべべーです。長野県の信濃町にあるLAMP野尻湖という施設の支配人をしています。

LAMP野尻湖は、サウナだったり、山菜採りやキノコ狩りだったり、SUPカヤックやスノーシューなどのアウトドアスクールだったり、さまざまな体験ができるゲストハウスです。サウナ施設「The Sauna」の運営もしており、その立ち上げに伴って2018年に移住してきました。
藤原
LAMP野尻湖、今や宿泊予約が数ヶ月先まで埋まってしまうほどの人気施設ですよね。
べべさん
そうなんですよ、ありがたいことに。
イベントを開催するといつも大賑わいの「LAMP野尻湖」。
べべさん
ここに至るまでの経歴もかんたんにお話しますね。私の出身は東京。そのまま都内で普通の大学生活を送っていたんですが、就職活動シーズンに突入すると同時に、LAMP野尻湖の親会社にあたるWeb制作会社の株式会社LIGにインターンシップで入ったんです。

ただ、車中泊で日本一周したり、アメリカ横断したり、ラッパーになったり(笑)。無茶振りを会社ブログにあげていくという活動をしていました。そんな中、車中泊で日本一周しているときにサウナに出会ったんです。
藤原
まだサウナブームが起きる前ですよね。
べべさん
そう。2016年くらいですね。サウナに入れた日は、めちゃくちゃよく眠れたんですよ。そこからハマって、会社でLAMP野尻湖というゲストハウス事業を行っているんだから、一緒にサウナをつくったらおもしろいんじゃないか、と提案して今に至ります。

移住してから実感する、長野暮らしのいいところ

藤原
お二人が「長野に暮らしてよかったポイント」ってありますか?
やぎちゃん
そう聞かれると思って準備してきました!私が長野に暮らして良かったと思うポイントは3つあります。

1つめはやっぱり「山が近いこと」。東京から山に行こうとすると、渋滞にハマって片道5時間なんて珍しくありません。でも、長野県内に住んでいれば渋滞も気にせず、だいたいどこでも2時間以内で行くことができるし、高速代も浮きます。
やぎちゃん
2つめは「仕事がしやすいこと」。東京にいるときは営業職で働いていたんですけど、毎日ノルマに追われたり、厳しいクライアントさんと向き合ったり、胃がキリキリしていました。でも、長野のクライアントさんはみんな優しい!この間なんて、商談の後に一緒に写真を撮ったりしたんですよ。
藤原
たしかに長野の人はみんな優しいですよね。
やぎちゃん
本当!毎回お茶とケーキ出してくれますし。
べべさん
それ、信濃町だったら野沢菜ですね。
藤原
(笑)。長野は本当にいろいろなお茶請けが出てきますよね。
やぎちゃん
実は最初に頂いたのはコーヒーだったんですけど、「私、コーヒー飲めないので、お茶と甘いものにしてください」って伝えたら、本当にオーダーに応えてくださって。
べべさん
自分からおねだりするスタイル(笑)。
やぎちゃん
本当にかわいがってもらっています(笑)。そして、3つめのポイントは「目立ちたい人に向いている」ということ。というのも、東京で活動していたときは、YouTubeチャンネルの登録者はずっと2万人くらいでくすぶっていたんですけど、長野に来た途端に4万人くらいに増えたんです。
藤原
東京で当たり前のことが、長野に来たら珍しがられたり、重宝されたりするケースって多いと思います。その分、やりたいことができる幅が広がりますよね。ちなみにべべさんは、「長野に暮らしてよかったポイント」ってありますか?
べべさん
長野はサウナを楽しむのに最高の場所なんですよ。サウナって自然との相性が大切で。特に信濃町は、野尻湖があったり、環境保護活動家のC.W.ニコルさんが手掛けた「アファンの森」があったり、北信五岳に囲まれていたり、特に自然環境に恵まれているんです。なので雪解けの水や地下水が最高だし、景色も抜群。長野じゃなきゃ成り立たないサウナ環境なんですよね。
藤原
たしかに「The Sauna」は、サウナ好きのメッカのようになっていますよね。
べべさん
ありがたいですよ。でも、本当に自然環境はおすすめしたい。移住してからは野尻湖でバス釣りにハマったんですけど、野尻湖以外でも渓流があるし、少し移動すれば上越の海にも行ける。

あとは、山菜採りやキノコ狩りも楽しむようになったら、道端に生えている植物が美味しそうに見えたりして(笑)。温泉も大好きなので、各地を巡ったりしていますね。
藤原
長野県は、日帰り入浴施設の数が日本で一番多い県ですからね。
べべさん
そうなんですね!長野だと1時間圏内で泉質が変わったりするので、すごく楽しいです。

東京へのアクセス、野菜の美味しさ……長野の暮らしはココが違う!

藤原
ちなみに、やぎちゃんは各地の山に登ったり、べべさんは日本一周したり、いろんな街を見ているじゃないですか。その中で、なぜ長野を選んだんですか?
やぎちゃん
実は私、移住するとき山梨県とすごく迷っていたんですよ。山梨県だと南アルプスもあるし、安曇野や松本方面にも便がいい。東京からも近い。結構条件が良かったんですよね。
藤原
そこでなぜ長野を……?
やぎちゃん
私、結婚しているんですが、旦那が「東京にいたい」と言っていて。長野には新幹線が通っているので、東京まで片道1時間20分。それだったら、二拠点生活も実現可能な気がしたんです。
藤原
たしかに東京の八王子に住んでいるのと変わらないような感覚ですよね。
やぎちゃん
そうそう。しかも長野と山梨の人口規模を考えると、長野の方がマーケットは大きそうなので、仕事がしやすそうなイメージはありました。
藤原
べべさんはいかがですか?
べべさん
僕はほとんど会社都合で移住したので、積極的に長野を選んだわけではないんですが、逆に住んでみて分かったよさはあります。それは東京との距離感。実家も東京だし、たまに都内で仕事があったりする。そのとき、東京に行くのがすごく楽しくなって。
やぎちゃん
あ〜!それ、わかります!ちょっと特別な日になるんですよね。東京の賑わいも苦じゃなくなるというか。
べべさん
そうそう。「東京すげぇ!」って刺激を受けますよね。僕、調べたんですけど、信濃町から夜21時頃の最終電車に乗れば、2時間半くらいで東京に出られるんですよ。そう考えたら、東京も気軽に行けそうだと感じません?
藤原
信濃町だけでなく、松本も終電が21時くらいまでありますからね。飯田もリニアが開通すれば、都内からのアクセスは良くなるでしょうし。ちなみにべべさんは、移住してからライフスタイルの面で変わったことってありましたか?
べべさん
クルマ社会なのでお酒を飲まなくなりましたね。東京に居た頃は付き合いが多くてたくさん飲んでいたんですけど、実はお酒はいらなかったんだって気づきました。

信濃町はみんな20時には寝る雰囲気。だから外で飲み歩かず、家でめちゃくちゃテレビを観ています。家での時間が増えたら、身体も健康になった気がしますね。
やぎちゃん
身体の変化で言ったら、私は移住して6kg痩せました!会社から30分のところに家を借りてよく歩くようになったのと、野菜をたくさん食べるようになったのが大きいと思います。
藤原
東京で野菜を買うのとは違うんですか?
やぎちゃん
全然違いますよ!長野の直売所はほんとうに素敵なんです!私は「オランチェ」って直売所で買える「アイコ」ってトマトが大好きです。108円でケースにたっぷり入っているんですから。
べべさん
直売所やばいですよね〜。あと、道の駅。みんな朝の9時から並んでますからね。都内のパチンコ屋さんかっていうくらい。

会場:(笑)

まずは都市部で暮らしてみる。2人のゲストが推す2段階移住。

藤原
お二人の経験を踏まえて、どんな人が長野に向いていると言えそうですか?
やぎちゃん
うーん。長野だったら、きっとどんな人でも受け入れてくれそうな気がする。長野の人は、みんな心が優しいんですよね。マンションの住人さんもいつもあいさつしてくれるし。引っ越しのときなんか、住人さんが「手伝いましょうか」って声をかけてくれたことに感動しちゃいました。
藤原
なるほど。たしかにそれは観光だけじゃなく、実際に暮らしてみないとわからない体験ですよね。べべさんはいかがですか?
べべさん
とはいえ、正直なところ、信濃町は住む人を選ぶかなとは思います。というのも、雪がものすごいので。今日も1mくらい積もっていましたもん。冬の間はずっと寒波が来ている感じ。

だから、まずは長野市などの都市部で暮らして様子を見るのがいいと思います。そこで「もっと自然豊かな場所に行きたい」「もう少しハードボイルドな暮らしをしたい」と思ったら、信濃町はめちゃくちゃおすすめです!
藤原
長野県って、長野市・松本・上田など、東京と比べても遜色ないほどの暮らしやすさが整った都市部が点在しているのが、特徴のひとつ。だから、まずはそういった地域に暮らして様子を見てみるのは、いい方法かもしれないですね。
やぎちゃん
私も長野市を拠点にして、いろんなところを巡りながら2段階移住を検討しています。特に長野市の場合は、最大2年間家賃補助が出る制度*があるので、その期間に好きなエリアを見つけたり、スキルを身に付けたり、人とのつながりをつくったりすればいいと思っています。

*令和5年7月20日時点。補助制度の廃止や補助内容の変更が生じる場合があります。

藤原
ありがとうございます。最後に、お一人ずつメッセージをお願いします。
やぎちゃん
今日のトークセッションで、「長野への移住を検討している人って、こんなに多いんだな」って実感しました。私は、一足先に長野に行って偵察しているような気持ちなんですが(笑)、長野の人は本当に温かく迎えてくれるんですよ。だから、迷っている人は一歩踏み出してもいいと思います!
べべさん
さっきやぎちゃんから、長野は「目立ちたい人に向いている」という話もありましたが、本当にその通りで。僕がいる信濃町は、まだまだ足りないことがたくさん。だからこそ、新しいことをやったもん勝ちなんですよね。

何かちょっと人生のフェーズを変えたいという人は、まずは長野市で土台をつくりながら、小さな街でのチャレンジを目指してもいいと思います。あとは、今はうちのお母さんもリモートワークしているような時代なので、二拠点生活やテレワークなど、なんでもできる。本当にポジティブにトライしてほしいなと思いますね。
藤原
ここでお時間が来ました。やぎちゃん、べべさん、ありがとうございました!
【やぎちゃんも登壇!】7/22(土)は過去最大の長野県単独移住フェアを開催!
100近い長野県内の企業や自治体が、有楽町に集まる「信州で暮らす、働くフェア」が2023年7月22日に開催されます。参加無料・事前申し込みは不要です。
イベントの詳細は下の写真を押してください。

撮影:篠原豪太
編集:飯田光平