
2026.01.22
3ヶ月で地方移住を決断。キャンプ好き夫婦が長野の村で見つけた「家族にちょうどいい暮らし」
こんにちは。長野市在住のライターの風音です。
暮らしやすさに惹かれて20代前半で長野市に移住してから早5年。つい先日、自然を求めて友人と県内のとあるグランピング施設に滞在した時のこと。外一面に広がる緑や鳥の声でリフレッシュ……と思いきや、「あれ?これ実家の景色と一緒じゃん」とふと気がつきました。

実家には山の麓にあり、子どもの頃は「もっと都会に住みたかった!」なんて思っていたのですが、今思い返すと自然豊かな環境で育ったことはすごく貴重な経験だったのかも。
自分も将来子育てをする……となったら、長野市よりももっと自然が近い環境がよくなるのかもしれません。とはいえ長野県は広く、県内に住んでいても自分に合った移住先を探すのはなかなか大変です。
そんな中、最近instagramで私が注目しているのが、子連れでの旅とキャンプ・長野移住の情報を発信するインフルエンサー、さえさんファミリー(@_saecam_)です。


3歳と6歳のお子さんがいるさえさんは、2024年の春に関東から長野県の宮田村に家族で移住。
子連れでの外遊び情報や長野移住のリアルを日々発信するほか、県内外の移住フェアでも移住相談にのっているというさえさんファミリー。
思い切って連絡をしてみたら、こころよく取材を引き受けてくれました。早速さえさんファミリーが暮らす宮田村へ! ファミリー移住のリアルについて伺います。
「この風景を日常にしたい」アルプスの絶景に惹かれて、長野移住へ

- 風音
- はじめまして。今日はさえさんファミリーに、家族での長野移住や子育て事情、リアルな暮らしの話をお聞きしたいと思います。まずはお二人のことを教えてください。
- さえさん
- さえです、よろしくお願いします。私は関西出身で、長野移住前は東京で会社員をしていました。現在は在宅で仕事をしています。2020年から、子どもと一緒に楽しめる旅とキャンプの情報をinstgramで発信し始めました。
- けいすけさん
- 夫のけいすけです。僕も関西出身で、移住前は東京のメーカーで機械設計の仕事をしていました。移住を機に会社員を辞めて、今は個人事業主としてSNSマーケター・運用代行、動画クリエイターのお仕事をしています。
- 風音
- 私は普段、長野市に住んでいるんですが、今回、初めて宮田村を訪れました。お二人は全国をキャンプ旅して回っていた中で、宮田村に出会ったんですか?

- さえさん
- いえ、そういうわけではないんです。むしろ、子育てがきっかけでキャンプが好きになり、そこから自然豊かな環境での子育てをしたくなって。私たち夫婦はもともとお出かけや旅が好きで、「子どもが小さいうちからいろんなところに連れていきたいね!」と二人で話していたんですが、ちょうど上の子が生まれた年に、コロナが流行りだして……。海外旅行どころか国内旅行も難しくなってしまったので、それなら家族でキャンプをしてみようと。
- 風音
- てっきり、もともとキャンプが好きなお夫婦だったんだと思っていました!
- けいすけさん
- キャンプなら、普段都会にいたら出来ないような自然体験を子どもにさせてあげられますし、子どもとたくさん触れ合うことができる。試しにやってみたら、キャンプと子どもってすごく相性がいいこともわかったんですよ。
- さえさん
- ホテル泊だと、そもそも子どもの宿泊が不可なところがあったり、子どもの体調でキャンセルしないといけなくなったりするけど、キャンプならノリでパッと出かけられるし、自由にいろんなとこに行けるんです。
- 風音
- なるほど、小さい子どもとのキャンプってハードルが高そうなイメージだったけど、むしろ相性がいいんですね。でも、東京で暮らしながら週末にキャンプをする生活を続けるのではなく、どうして長野に移住をしようと?
- さえさん
- 東京発でキャンプに行くとなると、本当に渋滞がすごくて。自然を求めて出かけているはずなのに、片道数時間渋滞にハマって車に閉じ込められる。「私たちは一体何してるんだろう?」と考えるようになって……。
- 風音
- リフレッシュのはずが本末転倒ですね。
- けいすけさん
- 二人目が生まれて、アパート暮らしでは手狭になったことも大きかったですね。キャンプ道具がしまえるガレージがあって、庭でのびのび子どもと遊べるような一軒家となるとやはり関東では厳しくて。もともと二人とも自然が好きで長野にはよく遊びに来ていたし、長野は教育県というイメージがあったので、自然と「いつか長野で暮らしたいね」と話すようになりました。

- さえさん
- あとはやっぱり、全国各地でキャンプをするなかでも、長野のアルプスの絶景に魅了されて。「週末だけじゃなくて、この風景が日常にあるところで暮らしたいな」という思いが一番の決め手でした。
移住フェアから3ヶ月、知らなかった村が暮らしの舞台に
- 風音
- でも、長野といっても広いですよね。そこから移住先はどうやって探していったんですか?
- けいすけさん
- 本当に広いですよね! 調べれば調べるほど、長野の中でもこんなに違うんだと驚きました。僕たちはもともと北アルプスが好きだったので、最初は安曇野や松本近辺を調べていました。でも、自分たちの生活スタイルを考えたとき、南信の方がいいんじゃないかと。

- 風音
- それはどうしてですか?
- けいすけさん
- 一番はアクセスの良さですね。移住してからもキャンプ旅は続けたいと思っていたし、南信なら中央道が走っているので、車があれば関西も関東もアクセスしやすい。それから、雪が降るかどうか。二人とも人生で雪かきを経験したことがなかったので、いきなりドカ雪のところに住むことは考えていませんでした。南信は長野の中でも雪が少ないこともあり、移住の決め手となりました。
- 風音
- なるほど、まずは自分たちが重視するポイントを整理して、エリアを絞っていったと。
- さえさん
- はい。ただ、南信にはあまり来たことがなく、どんなところか分からなかったのでまずは移住フェアに行ってみたんです。そこで初めて宮田村を知って。
- けいすけさん
- 移住フェアの後に、実際に遊びに行ってみたら中央南アルプスの景色に圧倒され、「ここだ!」と直感して。もともと北アルプスが好きだったんですが、それは単に北アルプスの景色しか知らないだけだったなと気づきました。

- さえさん
- 宮田村は村だけど、新しい公園やおしゃれなカフェが結構あったり、駒ヶ根市や伊那市などの大きい市に囲まれてるから、買い物にも困らない。景色が綺麗で、生活に不便のないところが良いなぁと思っていたので、都会過ぎず田舎過ぎずで、すごくちょうどよかったんです。
- けいすけさん
- それこそ、宮田村のお隣の伊那市や北杜市はもともと調べてはいたんですが、田舎なのに結構家賃が高かったり、そもそも賃貸住宅が全然なくて。
- 風音
- 地方の賃貸ない問題はよく聞きますね。
- さえさん
- それに私たちは最初から家を買うつもりはなかったので、そこは移住先を探す上での一番のネックでした。それで、宮田村の移住担当者さんにその悩みを話したら、私たちの希望に合いそうな賃貸物件をいくつも探してきてくださったんですよ。
- 風音
- 家探しまで!?それは手厚いサポートですね。
- さえさん
- そこまでしていただけるなんて、本当にありがたいですよね。長野には親類や知り合いは全くのゼロだったので、子育てをしていく上で「なにかあったら頼れる人が近くにいる」というのは、かなり大きな安心材料になりました。本気で移住をしようと思ったのが2023年の10月で、宮田村に決めたのが1月なので、約3か月のスピード勝負でした。
- 風音
- 移住の最後の決め手になるのは、やっぱり条件よりも人なんだなぁ。
子育てのためにキャリアを一時停止。夫婦二人なら、安定も挑戦もどちらも選べる
- 風音
- お二人はもともと東京で会社員をされていたんですよね。お仕事の面ではスムーズに移住を実現できたんですか?
- けいすけさん
- 実は、まさに働き方と向き合ったことが移住の決め手になったんです。妻はもともとリモート勤務ができる会社で育休取得中だったんですが、僕は出勤が必須の職場で、「僕の仕事があるから東京にいる」という状態だった。そこでさらに春から関西に転属するという内示が出て。子どもが小さい期間は本当にあっという間です。それなら、これを機に自分のキャリアを一時停止して、家族のため生活環境を変えようと決めたんです。
- さえさん
- 趣味ではじめたinstagramがお仕事になっていたことも後押しになりました。家族で楽しみながらコンテンツを配信することで、アウトドアから幅広くSNSに関わるお仕事をいただくようになりました。そして、長野移住を機に、時間も使いやすくなり本格的に活動もできるんじゃないかと。

- けいすけさん
- 個人的にも、周りの企業さんから「もっと自分たちのアカウントを伸ばしていきたい」という悩みをを聞いていたんです。今の時代、その企業さんもSNSでの集客は必要になってきますし、自分たちが取り組んできたSNSマーケや企業さんの運用代行の仕事は地方でも活かせそうだと。人間関係は一からのスタートでしたが、ありがたいことに移住から一年が経った今も、継続してお仕事がいただけています。
- さえさん
- もし「二人とも仕事を辞めて移住する!」だったら大変だったと思うんですが、一人はサラリーマンを続けながら、一人が新しいビジネスにチャレンジをする形なら調整できる。そのバランスが取れたからこそ、「二人ならなんとかなる!」と踏み出せた気がします。「全部やめなくても、始められるんだ」と思えたのが大きかったですね。
ただ注目を集めるだけではなく、本当に長野に人を呼び込みたい

- 風音
- 逆に、移住後に見えてきたギャップはありますか?
- さえさん
- 移住をする前は、「家の窓からきれいな景色が見える広い家に住みたい」というのが譲れないポイントでした。でも、一年生活してみて理想と現実の違いが見えてきましたね。たとえば、いくら雪が少ない地域とはいえ、家が広いとその分暖房の効きが悪くなるので冬場は結構家が寒くて……。
- けいすけさん
- 断熱をしっかりしているお家ならまた違うと思うんですが、僕たちは当時そういう知識もなく。広い庭も、夏の草むしりの大変さを想定していなかったよね。最初は面白がってやれていたんですが、だんだん「草むしりで一日終わるぞ!?」って(笑)。
- さえさん
- 窓の景色や庭の自然はそこまで重要じゃなかった。近くの公園とか、子どもの送り迎えに見える風景がきれいならそれで十分だし、遊ぶところはお外にたくさんある。
- けいすけさん
- 移住と定住はまったく別物だと思うので、最初から「ここに骨を埋めるぞ」という定住マインドじゃなかったのはよかったかもしれないです。まずはお試しの気持ちで一年暮らしてみたからこそ、自分たちの本当の優先順位が見えてきたなと思いますね。

- 風音
- 改めて、お二人がこれから宮田村や長野でやってみたいことを教えてください。
- けいすけさん
- 移住してから感じていることとしては、長野はいいところがたくさんあるのに情報が一部に偏っていると思うんです。白馬エリアでオーバーツーリズムが起きている一方で、僕たちの住んでいる南信には観光客があまり来ない。そういった課題を解消するために、南信の穴場スポットをもっと発信していきたいなと。
- さえさん
- 「デートで行ける絶景スポット!」はたくさん見つかるけれど、子どもを連れていけるのかはなかなか見えてこない。もしくは、ザ・田舎暮らしでDIYして、草刈りして、土を掘り起こす……みたいな自給自足のハードな暮らし。私たちは、長野ならのびのび暮らせるよ、日常の中で気軽に子連れで行ける場所がたくさんあるよ、ということを積極的に発信していきたいです。
- けいすけさん
- だから最近はYouTubeも始めてみたんです。ただ注目を集めるだけじゃなくて、ちゃんと長野に人を呼び寄せるためには長編動画で発信していかなきゃいけないんじゃないかなって。
- さえさん
- それは暮らし始めてから、一番の考え方の変化かもしれないですね。キャンプ情報だけじゃなくて長野の暮らしのことをもっと発信していきたいし、宮田村や南信エリアでの子どもと暮らしやすい環境づくりもやってみたいです。
- 風音
- ちなみに、お二人は移住フェアで移住の先輩としてお話したり、長野で家族向けのキャンプイベントも企画したりされていますよね。どうして移住相談までの役割を引き受けるようになったのでしょうか?
- さえさん
- 「自分たちが困っていたことを還元できるような何かをしたい」と宮田村の移住担当者さんにお話ししたら、「じゃあ移住フェアに来てよ!」という話になって(笑)
- 風音
- へー!実際に、さえさんたちのもとに寄せられた移住相談ってどれくらいあるんですか?
- さえさん
- 50件ぐらいかな?「いつか移住したいかも」くらいふわっとしてる人たちもいれば、本気の人もいる感じです。実際に移住を決断されたご家族も数組いらっしゃいます。
- 風音
- すごい!それはもう長野県からマージンを貰った方がいいですよ。
- さえさん
- たしかに、そろそろいただきたいですね(笑)。
でも、私たちが移住当初もっと相談できる移住者の先輩がいたらよかったなという思いがあるので積極的に引き受けているんです。ひとくちに長野移住と言っても、子育て環境で悩んでいる人もいれば、移住後の働き方で悩む人もいて事情はさまざまです。
だからと言って、多くの人に届けようとする発信は、結局誰にも響かないとも思うので、自分が悩んでいたことと同じ悩みを抱えている方に、リアルを伝えていけたらと思っています。これからもオフラインでじっくり話せる場所でもそうですし、移住に関する情報発信も積極的にしていきたいと思っています。
- けいすけさん
- 仕事がハードルになる人が多いなら、いずれは移住して来た人がこっちで仕事ができるような事業も僕たちでつくれたらいいよねって話しているんです。もともとは子どものための移住でしたが、親である僕たちもどんどんやりたいことが出てきている。そういう姿を子どもに見せられるのもいいことなんじゃないかなって。
- 風音
- うんうん、お二人ともとても生き生きして見えます。
- けいすけさん
- でもやっぱり、暮らしの面ではとにかく子どもたちといろんな思い出を作りたいですね。自分たちは都会で育ったので、子どもたちが宮田村でどう育っていくのかを見守るのが今は一番楽しみです。今はオンラインでいろいろなことに触れられるから、田舎で自然の中で遊びながらも、選択肢を狭めずに子どもが成長できると思うんです。
- さえさん
- 今は子どもたちにとってベストな環境は宮田村だと思っているのでこれからもしばらくここにいるつもりですが、子どもたちが中学生になったら、またその時々のニーズに合わせてまたどこかに行くかもしれない。これからも子どもの成長に合わせて、自由に生活スタイルを変えていければいいなと思っています。

撮影:五味貴史
編集:株式会社Huuuu

