移住したくなったら

静御前の桜、倒れる 大町・美麻の県天然記念物

静御前の桜、倒れる 大町・美麻の県天然記念物

 大町市美麻の県天然記念物「大塩のイヌザクラ」が5日、根こそぎ倒れた。樹齢は不明だが相当な古木で、市などが腐朽防止対策をしているさなかだった。源義経に愛された静御前にまつわる伝承があり、地元では「静(しずか)の桜」と呼ばれ親しまれており、住民らは残念がっている。

 市文化財センターなどによると、目通り周囲8・45メートル。樹高約20メートル。県内最大のイヌザクラとして1962(昭和37)年に県天然記念物に指定された。静御前がこの地を訪れた際、地面に刺したつえが根付いて大きくなったと伝えられている。

 近くの高齢者施設のパート職員(61)によると、5日午前10時前、「バリバリと何かがぶつかるような音がして窓から外を見たら、桜が倒れて土ぼこりが舞っていた」という。「大ショック」と、地元に暮らす美麻公民館長の細井忠さん(63)も嘆く。県天然記念物指定を住民は誇りに思い、合併前の旧美麻村が周囲に公園を整備して、子どもの遊び場や住民の憩いの場になっていた。

 ただ、春になると全体に咲いていた小さな白い花々も次第にまばらになり、幹には空洞もできて樹勢の衰えは明らかだった。市教委が周囲の土壌改良を続け、昨年度も県の補助金を得て枯れ枝を大量に切り、幹の負担を減らす工夫をしていた。この5月に花が咲いた後、「少し傾いてきたのでは」と言う人がいて、細井さんが記録のため写真を撮った、その数日後の出来事だった。(2021年6月8日、信濃毎日新聞)

この記事を書いた人
1873(明治6)年に創刊した長野県で日刊新聞を発行する企業です。きめ細かい取材網を生かした公正で迅速な報道に努めてきました。紙面づくりや多彩なイベントを通じた読者との双方向性を大切にしながら地域の産業や文化の振興も目指してきました。販売部数は約43万9000部(2020年4月)。県内シェアは70%超。地域に親しまれ、信頼される長野県民の主読紙として、人と時代をつなぐ仕事に取り組んでいます。