2021.08.04
売木村 復活した唯一のガソリンスタンド 本格営業1年 成果と課題
売木村で、通常は地下の燃料タンクを地上に置く「地上タンク」を使った全国初のガソリンスタンドが本格営業を始めて今月で1年。本格営業と同時期に村役場近くから国道418号沿いの道の駅近くに移転したことで利便性が高まり、売り上げ増につながっている。一方、経営者や従業員は高齢で、後継者の確保が課題となっている。
雨が降りしきる今月1日、1台の軽乗用車が給油に訪れた。事務所から出てきた所長の後藤文登さん(62)は「いらっしゃい」と声を掛けて給油。村内の50代女性は「基本的に給油するならここ。近くて便利」と話した。
村内では7年前、村で唯一のガソリンスタンドが営業をやめ、村外に出ないと給油できない状態が数カ月間続いていた。村観光協会や住民有志の「うるぎむらガソリンスタンドを残す会」が経営を引き継いだものの、既存の地下タンクは使用期限が迫り、更新に多額の費用がかかる見込みだった。
村は2019年、維持や更新費を抑えられる地上タンクの導入を決定。全国の「給油所過疎地」対策として経済産業省などが進める事業の一環で、「コモタ」(横浜市)が設置して村に無償で貸し出した。期間は15年間。村は同会に業務委託している。
移転後は村外からの買い物客やツーリング客が増加。加えてガソリン価格の上昇もあり、昨年7月~今年6月の年間売り上げは移転前の19年1~12月と比べ約500万円増え、赤字幅も縮小傾向にあるという。
村観光協会長を務めた後藤さんはガソリンスタンドがなくなった7年前から、村民とスタンドの利用について考える集会を開くなどしてきた。「スタンドは住民に必要なインフラ。なくすわけにはいかん」と強調する。
現在働くのは後藤さんとパートの70代女性の2人。冬の除雪など体力が必要な場面もあった。人口は500人余、65歳以上の割合(高齢化率)が46%に上る村で後継者を探すのは簡単ではないが、まずは15年間ガソリンスタンドを維持する必要がある。後藤さんは「後継者を探さないといけない」と話している。(2021年7月27日、信濃毎日新聞)