移住したくなったら

売木村 復活した唯一のガソリンスタンド 本格営業1年 成果と課題

売木村 復活した唯一のガソリンスタンド 本格営業1年 成果と課題

 売木村で、通常は地下の燃料タンクを地上に置く「地上タンク」を使った全国初のガソリンスタンドが本格営業を始めて今月で1年。本格営業と同時期に村役場近くから国道418号沿いの道の駅近くに移転したことで利便性が高まり、売り上げ増につながっている。一方、経営者や従業員は高齢で、後継者の確保が課題となっている。

 雨が降りしきる今月1日、1台の軽乗用車が給油に訪れた。事務所から出てきた所長の後藤文登さん(62)は「いらっしゃい」と声を掛けて給油。村内の50代女性は「基本的に給油するならここ。近くて便利」と話した。

 村内では7年前、村で唯一のガソリンスタンドが営業をやめ、村外に出ないと給油できない状態が数カ月間続いていた。村観光協会や住民有志の「うるぎむらガソリンスタンドを残す会」が経営を引き継いだものの、既存の地下タンクは使用期限が迫り、更新に多額の費用がかかる見込みだった。

 村は2019年、維持や更新費を抑えられる地上タンクの導入を決定。全国の「給油所過疎地」対策として経済産業省などが進める事業の一環で、「コモタ」(横浜市)が設置して村に無償で貸し出した。期間は15年間。村は同会に業務委託している。

 移転後は村外からの買い物客やツーリング客が増加。加えてガソリン価格の上昇もあり、昨年7月~今年6月の年間売り上げは移転前の19年1~12月と比べ約500万円増え、赤字幅も縮小傾向にあるという。

 村観光協会長を務めた後藤さんはガソリンスタンドがなくなった7年前から、村民とスタンドの利用について考える集会を開くなどしてきた。「スタンドは住民に必要なインフラ。なくすわけにはいかん」と強調する。

 現在働くのは後藤さんとパートの70代女性の2人。冬の除雪など体力が必要な場面もあった。人口は500人余、65歳以上の割合(高齢化率)が46%に上る村で後継者を探すのは簡単ではないが、まずは15年間ガソリンスタンドを維持する必要がある。後藤さんは「後継者を探さないといけない」と話している。(2021年7月27日、信濃毎日新聞)

この記事を書いた人
1873(明治6)年に創刊した長野県で日刊新聞を発行する企業です。きめ細かい取材網を生かした公正で迅速な報道に努めてきました。紙面づくりや多彩なイベントを通じた読者との双方向性を大切にしながら地域の産業や文化の振興も目指してきました。販売部数は約43万9000部(2020年4月)。県内シェアは70%超。地域に親しまれ、信頼される長野県民の主読紙として、人と時代をつなぐ仕事に取り組んでいます。