2021.09.24
高級ブドウ盗まないで 各地で被害 警戒強める農家
高級ブドウ「シャインマスカット」や「ナガノパープル」などの出荷が本格化する中、県内の8月の「ブドウ盗」被害額が計約53万3千円に上ったことが31日、県警への取材で分かった。既に昨年1年間の計約46万5千円を超過。深刻化する盗難被害に、各地の農家が頭を悩ませ、警戒を強めている。
8月下旬、塩尻市内の農家が、畑からシャインマスカットが盗まれた―と塩尻署に届け出た。被害の拡大を懸念した同署は31日、畑への進入防止対策ネットの設置、ビニールハウスの出入り口の施錠、防犯カメラやセンサーライトなどの設置をメールで呼び掛けた。
県警によると、今年は他にも北信地方でシャインマスカット、東信地方でナガノパープルが盗まれる被害が確認されている。
東筑摩郡生坂村大日向地区のブドウ農家でつくる大日向葡萄(ぶどう)生産組合は他地域で高級ブドウの盗難被害が相次いでいることから今年初めて、県の支援金など総額125万円をかけて畑周辺などに防犯カメラを複数設置し、組合員の車にドライブレコーダーを取り付けるなどした。花房篤組合長(38)は「盗難が起きてからでは取り返しが付かない」と危機感を募らせる。
一方、昨年、シャインマスカット約20万円分を盗まれたとする松本市山辺地区。地元のブドウ農家らでつくる農業再生協議会などが、地区として初めて8月下旬から県の支援金など約200万円をかけて防犯カメラ30台や注意を呼び掛ける看板約50枚の設置を進めている。
昨年は9件の被害があったという須坂市では農家などが対策を強化。ながの農協須高営農センターは農家10軒と協力し、畑の入り口の数カ所に体温に反応する防犯カメラを試験的に設置した。効果があれば設置台数を増やす予定という。市も夜間パトロールを昨年より半月以上早め、8月29日から始めた。
同市野辺のブドウ農家、後藤文夫さん(62)は8月、ライトを10台近く購入し、畑に設置した。道沿いの網を張り直し、新たに立ち入り禁止の張り紙も目立つように掲げた。数万~数十万円程度の盗難被害を補償する保険には入っておらず「結局、自分で守らないといけない」。
中野市でも8月中旬から農家や中野署が畑の巡回などを始めた。市農協によると、今年に入って防犯カメラ約30台、センサーライト約10台を農家にあっせん。市農協ぶどう部会長の田中大士さん(47)は「収穫までに大変な手間がかかっている。盗まれたら農家の怒りは大きい」と語気を強めた。
県警によると、例年、ブドウ盗被害のうち高額なシャインマスカットが被害に遭う件数や額が多い。県警捜査3課は「農家や地域と協力し、1件でも多く被害を抑えたい」としている。(2021年9月1日、信濃毎日新聞)