移住したくなったら

「地方に仕事はない」はホント?長野で活躍する人材紹介のプロに地方転職のリアルを聞いてみた

「地方に仕事はない」はホント?長野で活躍する人材紹介のプロに地方転職のリアルを聞いてみた

移住したい都道府県ランキングで常に上位を走る長野県。

「自然豊かな環境で暮らしたい」「子どもの教育環境を整えたい」など、さまざまな考え方で移住を検討する人が増えているようです。しかも、近年はコロナ禍でリモートワークも浸透。今後、移住の流れはさらに加速していくことでしょう。

一方で、「移住したい」と「移住できる」の間には大きな隔たりがあるのも事実です。

その要因のひとつになっているのが、「仕事」。

地方に移住することを妨げている理由や移住に関心を持てない理由の最も大きな要素として、仕事がネックになっているとするデータもあります。(東京圏、地方での暮らしや移住及び地方への関心に関する意識調査 内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局 令和2年9月

そこで、今回は長野県で活躍している「地方転職のプロ」とトークセッションを実施。

株式会社リクルートで長野・新潟エリアの統括を行っている小野雅博さんと、移住人材に特化した人材紹介会社を経営している合同会社ReConnect代表の瀬畑一茂さんが登壇し、地方転職のリアルを語ってもらいました。

考え方を変えれば、地方に仕事は「ある」

——早速ですが、移住希望者の中から「地方に仕事がない」という声を聞くのですが、本当でしょうか?

小野さん:
それは、“希望の条件を付け加えると”地方に仕事がない、ということだと思います。

たとえば給与条件で比較すると、たしかに都市部よりも長野県は水準が下がるかもしれません。でも、家賃などの物価が安い分、生活コストも下がります。可処分所得で考えれば、実際にはそれほど大きな差にはならない、というケースもあるんですよ。

――収入が減ったとしても、その分支出も減るから差は生まれにくい。

小野さん:
そうです。また、“希望の条件”は給与だけではありませんよね。長野への転職を希望される方の場合、「場所」にこだわりを持たれる方も多くて。「どうしてもこのエリアに住みたいけれど、希望の求人がない」というケースがあったりします。それも実際は、別の市町村に目を向ければ条件に見合う求人があることも多いんです。

――たしかに、車での移動を考えると少し離れた市町村でも無理なく通えたりしますよね。生活全体の可処分所得を考えたり、家や職場のエリアの選択肢を広げたりすれば、長野でも仕事が見つかる可能性が高まると。瀬畑さんは「地方に仕事がない」という意見に対してどう感じていますか?

瀬畑さん:
自分がイメージする職務にピッタリと合った仕事が見つかりにくいことも、「地方に仕事がない」と言われる理由のひとつだと思います。都市部の大企業に勤めている場合、職務が細分化されているケースが大半。しかし、地方の中小企業では人数が少ない分、担当する範囲は広くなりがちです。そうなると、自分の職能をピンポイントで活かせる職場を地方で探すことって難しいんですよ。

――地方の中小企業に勤めるとなると、職務が拡がることも覚悟しておくべきなんですね。

瀬畑さん:
はい。ただ、ここで重要なのは、給与が下がったり、職務も変わったりする中で、逆に何を得ようとしているのか、という視点です。家族との穏やかな暮らしや自然豊かな環境など、求職者の方にはそれぞれ自分の人生の優先順位があるはず。それらと照らし合わせて、「給与が減った」と考えるのではなく、「欲しい未来を買った」と考えることが重要だと思います。

地方へ転職するときに意識するべきキャリアイメージとは

――先ほど瀬畑さんから、都市部と地方では職務の範囲が違うという話もありました。地方に移住・転職するときには「職種」について、どのように考えたらよいでしょうか?

小野さん:
「営業職として働いていたから、営業職しかできません」というスタンスでは、選択肢は狭まってしまいます。自身の持っている力を、職種固有のスキルではなく、関係構築力や提案力といったさまざまな仕事で活かせる“ポータブルスキル”のレベルで捉え直すと、より視野が広がると思います。

瀬畑さん:
“ポータブルスキル”を活かして、それまでとは異なる職種で活躍している方々は多くいます。たとえば、ITの開発を行っていた方が製造現場の責任者になったり、マーケティングに従事していた方が管理部門で人事施策をつくっていたりするケースもありました。「『移住すること』が目的だから、仕事に関してはチャレンジしながら柔軟に取り組もう」と考えている人の方が、職場でも成果を出しているケースは多いようです。

――「専門性を磨き続ける」というキャリアイメージではなく、異分野にも積極的に関わっていく姿勢の方がよさそうですね。

瀬畑さん:
求職者の方には、いつも伝えていることがあります。それが「T字型」のキャリアイメージです。

縦のラインが自分の背骨となるスキルや専門性などの強み、横のラインがその強みを表出させる幅。縦の強みがいくら立派でも、組織からは「扱いにくい」と思われてしまう可能性があります。

前向きな姿勢や素直な人柄、チャレンジ精神など強みを発揮する幅広さを持つことで、組織とフィットすることができる。そういった人材は、都市部から移住してきても活躍しているイメージがありますね。

ビジョンや理念は、必ずチェックするべし!

――転職先を探しはじめている求職者の方に対して、「こんな情報を見ておくべきだ」というアドバイスはありますか?

小野さん:
2つのアドバイスがあります。ひとつは、中途採用の経験があるかどうかを調べること。

中途採用の経験がないと、求職者を受け入れたときの育成方法を企業がわかっておらず、入社者が混乱して短期離職になってしまうケースが多いんです。

もうひとつは、キャリアアドバイザーなどプロのアドバイスを受けること。自分ひとりで企業選びをしていると、「自分に合っているのはこういった企業だ」とバイアスがかかってしまいがちです。でも、プロはもっと広い可能性を提案できます。その後に自分で企業を選ぶとしても、視野を広げることができるんです。

瀬畑さん:
企業のビジョンや理念を調べることも大切ですね。長野にはオーナー企業がたくさんありますが、ビジョンや理念にはそのオーナーの考えや想いが凝縮されている。その考え方が自分とフィットするかどうかは、マッチングの観点からとても大事な要素になります。

企業によっては「顧客第一」など、一見変哲のない言葉を使っているところもあるでしょう。でも、そこで「御社にとって『顧客第一』とはどういった意味合いを持っていますか?」と面接で聞くことで、その言葉の奥に秘められた独自の価値観に触れられる場合もある。ユニークな言葉でなくとも、謳われているビジョンや理念を知っておくことは無駄にはなりません。

――ビジョンや理念を知ることが大事。ただ、中小企業だとHPに記載されていないケースもありますが、その場合はどうすればよいのでしょうか……?

瀬畑さん:
正直、ビジョンや理念が面に出ていない時点で、ミスマッチが生まれる可能性が高いと言わざるを得ないですね。そもそも、ビジョンや理念が掲げられてこそ、「自分はこんな役立ち方ができる」「こんな風に楽しんで仕事ができそう」などの判断材料を得ることができるわけですから。

――それほどビジョンや理念は重要なんですね。

ミスマッチを防ぐために、面接で聞くべき質問とは?

――「ビジョンや理念を調べること」以外にも、ミスマッチを防ぐ手段ってあるのでしょうか?

小野さん:
面接時にできることとすれば、「入社してから半年間、どうやって仕事を覚えていくのか」を教えてもらうこと。短期離職のおよそ8割が、半年で起こると言われています。その理由は、業務に慣れる期間が求職者の想定よりも短く設定されていたからです。

どうしても、求人票には入社して一人前になったときの内容しか書かれていません。そこに辿り着くまでの道筋は、聞かないとわからないんです。そこをすり合わせておくと、ミスマッチは防ぎやすくなると思います。

瀬畑さん:
選考の場面で、「過剰に自分を売らない」ことも重要です。できるかどうかわからないことまで「できます」と答えてしまうと、当然ですが入社後の期待値が上がります。でも、期待値が実態とかけ離れていたら、苦しむのは自分ですから。

できるかどうかわからないことを聞かれたら、「どこまでできることを望んでいるのか」を確認し、「ここまではできるけれど、ここからは努力する」といった基準を示すことが大切ですね。

また、同じ言葉を使っていても、応募者と企業で異なるイメージを抱いていることもあるんです。たとえば、実際に私もよく聞くのが「マーケティング」のギャップ。営業現場に近い「マーケティング」や数値分析を行う「マーケティング」、戦略を策定する「マーケティング」など、企業によって定義がさまざまなんです。自分が専門としている領域であっても、きちんとイメージに齟齬がないか確認できるとよいですね。

ただ、矛盾するようではありますが、結局働いてみないとわからない、とも考えていて。だからこそ、私の会社では入社前に「お試し期間」として業務委託で企業の仕事を手伝う時間をつくっています。

瀬畑さんが代表を務める合同会社ReConnect の移住者向け人材紹介サービス「移住と仕事.JP」

――そのほかにも、企業側と会話するときに、「こういう質問をするとよい」というアドバイスはありますか?

小野さん:
「人材育成に関して、どのような考え方を持っているのか」という点は、直属の上司になる方には確認しておきたいですね。人材育成には正解がない分、直属の上司の影響が大きいはずですから。

あとは、面接官が感じている仕事のやりがい。組織に定着する要因として、やはりやりがいは大きな要素を占めています。やりがいを持って働く方が多い組織だと、生き生きと自らの仕事を話してくれるはずですし、逆もまた然り。この2つの質問は、求職者の方におすすめしています。

瀬畑さん:
率直に「自分にはどんなことを期待しているのでしょうか」と聞いたらいいと思います。その職務への期待がどんなものかによって、自分自身のキャリアの方向性が定まってきますから。

――最後に転職・移住を考えている方にメッセージをお願いします!

小野さん:
ぜひ、第三者の意見を聞いてほしいと思います。大切なのは、「自分は人生にどんな優先順位をつけていて、何を満たせていたら幸せなのか」という“軸”。それが定まらないまま、自分に合う企業を探して迷子になってしまうケースが多いんです。

“軸”を見つけるヒントは、第三者からのフィードバックをもらうこと。私たちのような転職エージェントでもいいし、先に転職や移住をした知人でも構いません。そのような人たちから客観的な意見をもらい、自分が何者なのかを掴んでから、フィットする企業を選ぶというプロセスを踏むと、転職移住の成功確率が高まると思います。

瀬畑さん:
移住は、人生を変える選択肢。だからこそ、小野さんも言っていたとおり優先順位を明確にしておく必要があります。「なんとなくこういう企業がいいな」という方は、なかなか満足度の高い転職・移住は実現しにくいかもしれません。「なんで移住・転職をしたいのか、それが何を生み出すのか、お金の代わりに自分は何を得たいのか」と考えを深めていく。そこが重要だと思います。

(画像提供:五味貴志)

地方に仕事は「ある」のか、「ない」のか。
その答えは自分次第なのかもしれません。

「自分が人生において、最も得たいものは何なのか」。
その優先順位によって、上記の答えは変わっていきます。

お金なのか、自然豊かな環境なのか、家族との穏やかな時間なのか、新たなチャレンジなのか……その答えは人それぞれです。

長野への移住や転職を検討している方は、一度人生の優先順位を考えてみる機会を持ってみてはいかがでしょうか。

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聞き手:藤原 正賢
編集:飯田 光平