移住したくなったら

移住したら100万円……!?太っ腹な長野県の移住施策と、それでも「お金に釣られないで」と語る胸の内

移住したら100万円……!?太っ腹な長野県の移住施策と、それでも「お金に釣られないで」と語る胸の内

こんにちは。
長野県出身のコピーライター、小林拓水です。

僕は、就職のため上京して以来、東京で働いているんですが、大好きな地元の空気を吸うために、月に1回程度長野に行く生活を送っています。

このようなライフスタイルを続けること数年。「そろそろ長野に住みたいなぁ」という気持ちが強くなってきました。

ついつい長野へ想いを馳せてしまいます。

ただ、頭によぎるのは、「お金」の問題。
「妻も子どもいる駆け出しコピーライターが、いきなり長野に移住して生活していけるのか?家族を養っていけるのか……!?」
心配性の僕には、そんな不安がちらつきます。

せめて引っ越しなどの初期費用の負担を減らすことができたり、仕事が軌道に乗るまでの支援があったりすれば……

そこで!
今回は移住者に向けたお金の支援について話を伺うために、長野県庁にやってきました。

訪問したのは、移住相談を担当している信州暮らし推進課。

長野県内のさまざまな移住支援制度に詳しい信州暮らし案内人の清武まど加さん(左)と、産業労働部で移住支援金を担当している山口奈央さん(右)に、移住にまつわるお金の話を聞きました。

移住支援金について教えてくれた清武(きよたけ)さん(左)と山口(やまぐち)さん(右)

最大100万円!長野県が提供する移住支援金とは

小林
今、長野への移住を考えているんですが、お金の面でちょっと不安があって……。長野県では、移住するとどんなお金の支援を受けることができるんですか?
山口
まず、長野県の企業に就職するだけで、最大100万円の支援を受けることができます。
小林
え!?そんな太っ腹な制度が!
山口
はい、それが「UIJターン就業・創業移住支援事業」という制度です。細かな条件はあるんですが、基本的な枠組みとしては東京圏や大阪府、愛知県といった都市圏からの移住者で、長野県が運営する求人情報サイトに掲載されている求人に応募し企業に就業した場合、単身世帯だと最大60万円、2人以上世帯だと最大100万円を支援する、という条件になっています。
小林
それだけの支援をいただけると、とても助かります。でも、正直、県の求人情報サイトに掲載されていない企業もたくさんあると思うんですが……
山口
それが、令和3年度から対象要件を拡大したんですよ。県の求人情報サイトに掲載されていない企業に就業しても「関係人口」の方であれば、支援を受けられる可能性があります。
小林
それは助かります〜!長野県出身の僕も「関係人口」になるのかな……?
山口
はい!申し込んだ方が「関係人口」かどうかの認定は、各市町村に委ねられているのですが、基本的には、このような条件になっています。
小林
なるほど。僕の場合は、子どもの頃通学していた松本市に移住する場合は「関係人口」として認められるのか。ちなみに「関係人口」だったら、県内のどんな企業に就業しても支援金がもらえるんでしょうか?
山口
就業先となる企業にも条件はありますが、県内の中小企業であれば幅広く該当するものになっています。具体的には、対象となる求人情報サイトの掲載条件を満たしていること、もしくは「職場いきいきアドバンスカンパニー」という長野県の認証を得ていることのいずれかが就業先となる企業の条件ですね。詳しい内容については、長野県庁内のWEBページをご覧いただければと思います。
山口
あとは、県内企業に就業しなくても、テレワーカーとして移住される方も対象になります。コロナ禍によってテレワークが普及したこともあり、都市圏の企業に在籍しながら移住を希望される方は増えていますね。
小林
テレワークか……東京から長野市までは新幹線も通っているし、出社は月に数回、という人もいると考えると、長野は移住しやすい環境ですよね。ちなみにフリーランスとして活動している僕のように企業に所属していない人でも、移住支援を受けられるんですか?
山口
はい!一定の要件を満たせば、起業や開業、事業承継など県内で創業される場合でも利用することができますよ。ただし、この「UIJターン就業・創業移住支援事業」は、県内の61市町村と共同で行っている事業。参加していない市町村もあるので、詳しくは移住を検討している自治体に問い合わせていただければと思います。
小林
フリーランスでも利用可能というのはありがたいですね……。僕も移住したら100万円もらえるのかなぁ。
山口
小林さんにいい話を教えます。今紹介したような県内で創業される方の場合だと、先ほどの「UIJターン就業・創業移住支援事業」に加えて、さらに最大200万円もらえる制度もあるんですよ。
小林
なんと……!!
山口
それが、ソーシャルビジネス創業支援金です。県内で創業される事業が、地域の課題を解決する事業として認められれば、創業に必要な経費の2分の1以内、最大200万円の支援を受けることができるんです。
小林
移住支援金100万円と創業支援金200万円を合わせると、最大300万円の補助か……かなり大盤振る舞いだなぁ。

県庁だけじゃない!市町村ごとに用意されたユニークな支援制度

小林
長野県としてだけではなく、市町村単位でもお金の支援はあるんですか?
清武
はい。移住者を迎え入れるために市町村ごとに独自の支援制度を設けています。例えば宮田村は「初めて暮らす土地でいきなり家を購入するのはリスクがあるため、まずは賃貸で住んでもらおう」と考えて一定期間安い賃料で借りることのできる移住者専用賃貸住宅を提供していますし、逆に富士見町などは「思い切ってマイホームを購入する若者の負担を減らしたい」と考えて住宅購入の支援を行っています。
小林
なるほど。市町村ごとに、支援する目的が違うのか。
清武
移住を検討している新婚さんには、松川村や南木曽町など結婚新生活支援金を支給している市町村をご紹介したこともありました。ほかにも、北陸新幹線の駅がある佐久市では、リモートワークを実施している方や住宅購入者に新幹線の定期券代を補助する制度を設けています。
小林
まさか新幹線通勤も支援してくれるとは……!テレワークも普及しているし、二拠点居住者にとっては、かなり嬉しい支援ですね。
SuuHaaから資料請求した際に届く移住関連資料
清武
あと、長野県ならではの支援として、積雪への対策費用の補助があります。白馬村や飯山市などの豪雪地帯では屋根の積雪対策費用の補助、栄村や泰阜村では薪ストーブ等の購入補助や大町市では雪道の路上講習会を行っています。
小林
たしかに雪のある暮らしに慣れていない移住者の方にとって、手助けがあるのはありがたいだろうなぁ。

<市町村が行っている支援策の例↓>

市町村名支援名概要



出産祝い金
村内に居住及び住所を有する若者で本村に定住する意志がある場合、出産の日から6ケ月経過後に支給
【支給額】1人目 10万円/2人目 20万円/3人目以降 50万円



農業後継者等
育成奨励金
新たに農業を開始する場合、後継者として農業経営を開始する場合に100万円/人を給付

若者定住マイホーム
支援事業補助金
(新築住宅購入)
400万円以上の新築住宅の購入費に対し200万円を補助(45歳以下の方が対象)


住宅取得(新築・中古住宅の購入)に関する補助・Iターン:50万円+米1俵/Uターン:30万円
・町内業者による住宅:20万円/町外業者による住宅:10万円
<条件>
申請者の年齢が50歳未満/自治会に加入/5年以上の居住を確約


移住促進サポートプラン(新幹線通勤)一人あたり年額最高30万円(最長3年間で最高90万円)の補助。新幹線通勤定期券を佐久平駅で購入した者で、通勤手当額を控除した額の2分の1の額。申請者と世帯構成員に限る。
詳細は各市町村のHPをご覧ください。

移住の「何を」支援してほしいか、を考えよう

小林
それにしても、そんなにお金の支援制度があるなんて全然知らなかったなぁ。そもそも、それだけたくさんある支援制度をどうやって探せばいいんでしょうか?
清武
まずは移住検討先の市町村か、長野県が運用する移住ポータルサイト「楽園信州」の支援制度一覧をご覧いただくのがいいと思います。ただ、移住相談を受ける立場として、「とりあえず移住するので支援してください」と言われると、正直戸惑ってしまうこともあって。
小林
と、いいますと?
清武
そもそも支援制度というのは、「何か手助けしてほしいことがある」というのが前提なんです。だから、その方が、どんなかたちで移住しようとしていて、どんなことを手助けしてもらいたいかがわからないと、適切な支援制度をご案内しにくいんですよね。例えば「創業したい」「住宅を購入したい」「テレワークしたい」など、イメージされている移住のかたちを伝えていただければ、そのニーズに合った支援制度をご案内することができます。
小林
なるほどなぁ。一方で、まだ移住のかたちがはっきりと定まらない人も多いと思うんです。そのような人におすすめの支援制度ってありますか?
清武
移住を考え始めた人に、うってつけの支援制度があるんです!それがこちらの「楽園信州ファミリー」ですね。これは、長野県への移住希望者であれば無料で加入することができる会員制度です。例えば、移住先の下見をする際に使うレンタカー費用や引っ越し料金、賃貸物件の仲介手数料などの割引といった応援企業からの幅広い特典を受けることができます。
小林
これだったら、細かな条件を気にすることなく、支援を受けることができそうですね!

お金が理由で移住してきた人は、お金が理由で去ってしまう

小林
それにしても長野県って、こんなに移住支援が充実しているんですね。こんなにお金を支援してくれたら、「移住したい!」って人も増えそうじゃないですか?
山口
実は、そこが複雑なところで。私たちの経験から言うと、お金が理由で移住してきた人は、なかなか地域に定着できないまま去ってしまうケースが多いんですよ。
小林
それはなぜ……?
山口
新しい土地で暮らすとなると、当然予想外の出来事がたくさん起こります。以前の生活に比べて不便だと感じることもあるでしょう。お金の支援は、ほとんどが一時的なもの。暮らし続けるうちにそのメリットが感じられなくなってくると、最終的には地域を去ってしまうこともあって。それって、本人にとっても、自治体にとっても、不幸せなことですよね。
清武
過疎地域などでは、定住促進の奨励金などの支援が充実しているところも多いんですが、その分暖房費で冬の光熱費が高くなったり、自治会費がかかったりと思わぬ出費もあります。また、トイレが汲み取り式で、意外な手間がかかることも。そんな不便を楽しめるかどうかが、過疎地域などに移住する際のポイントにもなるんです。

「お金の支援が最も充実しているから」という理由で安易に決断するとミスマッチが生じてしまいます。お金の支援は、あくまで補助的なものとして理解いただき、自分が大切にしたいライフスタイルや人とのつながりなどを重視して、移住先を選んでいただくのがいいと思います。
また、気になる支援制度がある場合は、必ず移住前、物件の購入や着工前に移住先の市町村へご確認ください。
小林
支援制度も、私たちの税金で運用されていると考えると、ミスマッチが生まれたらもったいない気がしますね……。今日は、ありがとうございました!

まとめ

今回、伺った移住にまつわる「お金」の話。

長野県には、充実した支援制度がある一方、「お金が理由で移住した人は、お金が理由で去って行く」というさみしい現実があることを知りました。

まずは自分がどんなライフスタイルを送りたいかを考えて、適切な支援制度を探すのが、幸せな移住への一歩なのでしょう。

まずはワーケーションなどを行って、自分がどこで、どんな暮らしをしたいのか考えるのもひとつの方法かもしれません。

いやぁ、早く移住したくなってきたなぁ〜。

撮影:藤原 慶
編集:飯田 光平