移住したくなったら

「長野は最適な遊び場」東京在住のクリエイターが長野でシェア別荘をつくるワケ

「長野は最適な遊び場」東京在住のクリエイターが長野でシェア別荘をつくるワケ

こんにちは。
ライターの小林です。

今回ご紹介するのは、「遊び場をつくる」という長野との関わり方。

「長野はやりたかった遊びをするのに最適だった」と語るのは、今回インタビューしたカズワタベさんとヤンス キムさんという2人のクリエイター。カズさんは首都圏の企業に勤めつつWebサービスの開発などを、ヤンスさんはフォトグラファーとして有名アーティストやスタートアップのビジュアル制作を行っています。そんな2人は普段は東京でクリエイターとして働きながら、知人と共に長野市内でシェア別荘をDIYでつくっています。

観光で「訪れる」でもない、移住して「住む」でもない。

新しい長野との関わり方を実践する2人に話を聞きました。

デジタルのものづくりから、“家”というリアルなものづくりへ

絶賛DIY中のシェア別荘でインタビューに答えるヤンスさん(左)とカズさん(右)
小林
シェア別荘の取り組みは、どのようにはじまったんですか?
カズさん
便宜上シェア別荘と呼んでいますが、今後の用途が固まってるわけじゃないんです(笑)。今回はちょうどヤンスと「長野に拠点欲しいよね」って話していたところに、縁があってDIYでリノベーションできる物件が見つかって。僕たちだけでは施工まで行うことは難しかったんですが、設計事務所で働く仲間にも参加してもらえることになって実際に話が進むことになりました。

費用面でも仲間同士でシェアすれば個人で別荘を購入したり、その都度ホテルに泊まったりするよりも負担が少なくて済む。一方で「自分たちの拠点」を持って、定期的に滞在することで、その土地に深く入り込むことができるなと思ったんです。
ヤンスさん
メンバーのみんなで物件の見学に行ったんですが、味のある民家で、駅からのアクセスもいい。4人が使っても伸び伸びと過ごせる広さもある。条件がめちゃくちゃ良かったんですよ。
カズさん
しかも、話を聞いたら「DIYしても良い」と言ってくれて。「じゃあ、思う存分やっちゃいます」ということでシェア別荘をDIYでつくることにしたんです(笑)。
小林
物件探しから仲間探しまでいろいろな好条件が重なったと。ずいぶん思い切りましたね。それにしても、どうしてシェア別荘をつくりたいと思ったんですか?
カズさん
自分たちの手で、フィジカルな、なにかおもしろい場をつくることに興味があったんです。というのも、僕は本業ではWebサービスの開発などをしています。インターネットじゃないと実現できないことはもちろんあるんですが、その一方で物理的な何かに触れる機会を求めるようになってきて。その中でも興味があったのが“家”だったんです。
小林
インターネットの世界だけではなく、リアルの世界でも、ものづくりをしたくなったと。
カズさん
そうですね。自分もそうですが、ほとんどの人にとって、住宅コストって一番高い“サブスク”だと思うんですよ。でも普通に生活していて家について理解を深める機会ってほとんどない。あと、もともと建築が好きだということもあって家いじり自体、関心があったんです。将来家は建てたいなと思っていて、この経験をすることで、実際に自分で家を建てるまではいかなくても、工務店などに依頼するときにコミュニケーションがスムーズになったらいいなと思っています。
ヤンスさん
実際に自分の手で家を壊したり、つくったりしてみると、家の構造がわかっておもしろいんですよ。「床を水平にするのってむずかしい!」とか「壁が垂直になっているのってすごい」とか(笑)。やればやるほど、大工さんへのリスペクトが増してきますね。あと、本業の方でも撮影に使うための小道具をつくったりするときに、ここでの経験が生きているので助かってます!
カズさん
あと、長野だとDIYしても、内容によってはそれほど近隣に気を遣わずに済むのがいいですね。以前、東京のマンションでデスクの板を切ろうとしたら、騒音が思ったより大きくて……。「集合住宅だと板一枚すら切れないのか」とショックだったんですが、ここは思う存分作業ができます。
ヤンスさん
今ではすでにちょっとした工務店くらいの工具が揃っています(笑)。

都市圏と比べると4分の1?安価な家賃が可能にする「遊ぶ家」

小林
みんなでワイワイ家いじりするのもおもしろそうだなぁ。実は僕も、友人とシェアハウスを検討したことがあるんですが、「お金やルールのことで揉めて仲が悪くなったらイヤ」という理由で頓挫したことがあって。みなさんは、お金についてどのように考えているんですか?
カズさん
その点は、長野という場所や、そもそも大家さんが知り合いだということが大きいですね。というのも、都市圏に比べると住宅のコストは驚くほど低くて。家賃は半分で、広さは倍なんてことも珍しくありません。そうすると実質4分の1のコストで場を持つことができるんです。

さらに、そのコストを複数人でシェアすると、各々が趣味として払うことができる最低限の費用で十分まかなえるので、そもそも揉める金額にならないんですよね
ヤンスさん
あと、僕たちは「住む家」というより「遊ぶ家」という意味合いが強くて。毎日の生活を送る家となると、妥協できないことが出てくるかもしれませんが、ここはあくまで遊び場。それぞれ生活の基盤は持った上で、みんなが使いたいときに使って、集いたいときに集う。そのような最低限のルールで回せるからこそ、揉めごとになる心配はしていません。

長野の魅力に惹かれ、増していく移住への気持ち

小林
実際にシェア別荘づくりで通うようになってみて、長野の印象はいかがですか?
ヤンスさん
来る度に長野のポテンシャルの高さを感じています。山や川、湖などの自然のロケーションに恵まれているし、登山や釣り、サウナなど土地の力を活かしたアクティビティも豊富ですよね。アウトドア好きにはたまらない場所だと思います。
カズさん
移動が苦じゃない範囲で、観光スポットがあちこちに点在しているのも長野のおもしろいところだなと思いました。僕たちがシェア別荘をつくっている長野市周辺だけでも、栗やワイナリー、図書館などで有名な小布施があれば、温泉とスキーで有名な白馬や野沢温泉があったり、最近ではサウナが有名な信濃町もある。1回来ただけでは満喫しきれない、通い甲斐がある地域ですね。
ヤンスさん
それにご飯もおいしい。さまざまな食材の産地だから、全部新鮮なんでしょうね。おかげで行きつけの飲食店もできました。のれんをくぐると「よくやってきたね!」なんて声をかけてくれるんです。そういうシーンが増えると、土地への愛着も湧いてきますね。
小林
そうなると、いっそ長野に移住したいと思うことはないんですか?
ヤンスさん
シェア別荘づくりをはじめた当初は、移住はイメージしていませんでした。ただ、通っていくうちに「長野での暮らし」について考えるようになりました。いずれ移住する可能性も、ゼロではないと思います。
カズさん
移住の検討自体はしていますね。仕事が東京であっても、新幹線でのアクセスが良いので工夫次第でどうにかならないかなと思っています。長野に居ることで、この家をどんどん進化させることもできるし、おいしい飲食店の開拓もできる。こっちで出会った事業者さんとの新たなプロジェクトが生まれるかもしれない。メリットはたくさんあるなと思っています。
小林
仕事にも良い影響が生まれるんですね。
カズさん
はい。実際、長野に通い始めてからいくつかのプロジェクトが動き始めています。特に長野の事業者さんは、長い間、地に足をつけて商売している方が多くて、とても勉強になりますね。
壁を抜いて、2室の和室を1室の洋室へとリノベーションした現状のシェア別荘。
小林
ちなみに今後、おふたりはこのシェア別荘を活かしてどんなことをやりたいと考えているんですか?
ヤンスさん
僕はフォトグラファーなので、長野という土地に慣れてしまわないうちに、長野で作品を撮って、展示を開催できたらいいなと思っています。自分たちがつくった場所で、自分の作品が展示できたら最高ですね。
カズさん
僕はこの家に限らず、ずっと“家いじり”を続けたいですね。本来家って手を加え続けていくものだと思うんです。家の中が整備されて滞在できるようになったとしても、みんなで少しずつアレンジし続けていきたいです。昼はDIYで身体を動かし、夜はみんなで長野のおいしいごはんを食べに行く……そんな週末が過ごせたらいいですね。

取材を終えて

「住む」より先に「遊ぶ」を考える。

カズさんやヤンスさんが教えてくれたのは、長野との新しい、軽やかな関わり方でした。

長野には、土地柄に合わせたアクティビティもあれば、都市圏と比べて安い地価を活かした「家いじり」という離れ業の遊び方もある。

まずは長野というポテンシャルに満ちた“遊び場”を楽しんだ先に、その人なりの長野との関わり方が見えてくるのかもしれません。

みなさんは、どうやって長野を遊びますか?