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「顔欠け」道祖神に「願掛け」 安曇野で160年ぶり再建

「顔欠け」道祖神に「願掛け」 安曇野で160年ぶり再建

 安曇野市堀金烏川の岩原地区住民らでつくる「岩原の自然と文化を守り育てる会」は28日、江戸時代末に御利益がないとして顔が削られ、市内を転々としていた道祖神を当初と同じ場所に約160年ぶりに再建した。「顔欠け」を「願掛け」と読み替え、大切にしていきたいという。

 高さ95センチ、幅55センチで、手を握り合う男女の神が彫られている。同会などによると、無病息災などを願い1826(文政9)年に建てられたが、その後、感染症が流行したり大火事が続いたり。1862年に新たに一回り大きな道祖神を建立したのを機に顔を削り、供え物を置く土台石にされた。顔を削り取ったのは魂を抜くためとみられる。

 昭和40年ごろには、県道拡幅に伴う道祖神の移動で土台石は不要となり、空き地に放置。旧堀金村の公民館敷地の一角に移され、2014年からは市豊科郷土博物館で紹介されてきたが、同会の住民から「元に戻したほうがいいのでは」と声が上がった。

 この日は住民ら10人ほどが見守る中、石材店が新たに用意した土台の上に、顔が削られた道祖神が建てられた。同会の百瀬新治代表(70)は「本当の場所に道祖神を戻せたことはとてもうれしい。道祖神として再度、活躍してもらい、地域づくりにつなげたい」と喜んでいた。

 同会では今後、道祖神を含む地域の史跡などを紹介する案内ツアーを計画している。(2021年9月29日、信濃毎日新聞)

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