移住したくなったら

10代新卒者2人 上伊那森林組合・伐採班で活躍中

10代新卒者2人 上伊那森林組合・伐採班で活躍中

■安全管理の徹底や待遇改善し迎える

 上伊那森林組合(伊那市)に今年、5年ぶりに新たな職員が入り、伐採などの技術を磨いている。浦野樹さん(18)=伊那市美篶=と前田晃輝さん(19)=同市高遠町=の2人で、支障木の除去などを担う特殊伐採の班に所属。組合は数年前から進める待遇改善にさらに力を入れ、不足する若い人材の獲得を図る方針だ。

 外で体を動かす仕事に就きたいと考えていた浦野さんは高遠高校(伊那市)、休日にロードバイクで走るアウトドア派の前田さんは駒ケ根工業高校(駒ケ根市)を卒業して同組合に入った。

 2人が担当するのは、支障木の伐倒の準備や、伐倒後に枝を払い、決められた長さに切り分ける造材など。材木を市場で高く売るため、「きれいに切らないといけないから神経を使う」(浦野さん)。横たわる木の幹の上下からチェーンソーの刃を入れて切り口を平らにするのは難しく、木の重心や刃先の向きに注意しながら試行錯誤を重ねる。

 県森林組合連合会によると近年、高校の新卒者が職員となるのは県内18組合全体でも年1、2人程度。上伊那森林組合は人材の確保に向けて、ここ数年、賞与の支給を始めるなど待遇面を改善してきた。吉田康二副参事は「以前は胸を張って新人を迎えられない状態だった」と振り返る。

 林業の作業は危険が伴うイメージもある。2人とも、進路を決めて家族に報告した時は「危なくないのか」との反応が返ってきた。長野労働局の統計によると、県内全体の林業現場で今年の労災事故は11月末時点で28人に上る。前田さんも「危険があるのは間違いない」と認識する。

 このため、組合は作業前に現場の危険箇所について共有し、伐倒の手順を確認するなど安全管理を徹底。ヘルメットや靴などの装備を支給し、チェーンソーの扱いに十分に慣れてから山林での作業に従事させるようにしている。

 12月上旬、同市高遠町での支障木の除去作業。チェーンソーの音を響かせ、前田さんが伐倒済みの木を長さ4メートルほどにきれいに切り分けた。伐倒に挑戦した浦野さんは、木の傾きや重心を見極めて刃を入れ、切り倒した。

 特殊伐採班では近くに電線や住宅がある状況での伐採が多く、「狭い中でも狙ったところに完璧に倒せるようになりたい」と浦野さん。指導役の林加寿彦(かずひこ)さん(31)が「8カ月の成果が出ている」と褒めると、2人はそろってはにかんだ。(2022年12月21日配信)

作業の合間に休憩する浦野さん(中央)と前田さん(右)