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「いいマツタケがある」と信じる客が後を絶たない店 飯田

「いいマツタケがある」と信じる客が後を絶たない店 飯田

 マツタケ?いや、ティッシュです―。飯田市のJR飯田駅近くの居酒屋「いな垣」に、ティッシュで作った「マツタケ」が置かれている。常連客の女性(54)が10年ほど前から毎年秋に色合いや質感にこだわって作り、本物と見間違える精巧さだ。「いいマツタケがあるな」と信じる客が後を絶たない。

 女性は飯田市在住。10年ほど前に市内の病院でティッシュ製マツタケの置物を見て、自分で作るようになった。5枚ほど重ねたティッシュを丸めて柄を作り、同じ手順で作った傘を輪ゴムでくくり付ける。こんろの火で焦がし、マツタケ独特の色合いと質感を演出。娘の助言で着色にアイシャドーも使う。柄に土や落ち葉を付ければ完成だ。

 実はこの女性、本物のマツタケ狩りも得意。不作の年には「自作」のマツタケを眺め、気を紛らわせるのだという。知り合いに見せて驚かせるのも楽しみだ。

 今月下旬のある日、いな垣には女性を含め5人の常連客がいた。食べていたのは、女性が作ったマツタケごはんのおにぎりで、今年は豊作という。「こんなにうまいマツタケごはんは初めてだ」と店主の稲垣大輔さん(43)。「小さな秋」のお裾分けで皆が笑顔になった。(2021年9月25日、信濃毎日新聞)

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