2022.04.28
約1年で移住者10組誕生!?”移住の壁”を超えるために実践した活動は「業務外の現地アテンド」だった【SuuHaa 1周年記念】
長野県の移住総合メディア『SuuHaa』は、2022年3月17日に立ち上げから1周年を迎えました。
これまで、長野県内で働く人々や、豊かに暮らす人々の姿を取材してきた同メディア。
地元企業やレストラン、農家さん、移住者の方々など、取材に応じてくださった多くの方々のおかげでメディアをつくり続けることができました。
この1年間、SuuHaaは誰かの"長野県に興味を持つ入口"になりたいと考えてきました。移住を考えている方だけでなく、「いつか地方で暮らしたい、働きたい」と漠然と思い描いている幅広い層にとっても参考になるコンテンツを発信してきました。
1周年を記念したこの記事では、そんなSuuHaaの取り組みと実績を振り返っていきます。
1年間で30本のオリジナル・インタビュー記事を公開しました。
SuuHaaでは、長野県庁、地域に約150年根差し続ける地元新聞社「信濃毎日新聞社」と、全国各地に眠るローカルの価値を届けるコンテンツ編集集団「Huuuu」の3者が協力して記事を制作。
毎月編集会議を行い、長野県に溢れる魅力的な人や場所、取り組みを伝えるために独自の取材を行ってきました。
そうして1年間で制作した記事の本数は、30本。
自治体による移住の情報発信というと、その多くが"暮らしやすい環境"や、"移住体験談"など、実用的な情報を伝えることになりがちです。
SuuHaaでは、地域に伝わる文化や新たな活動など、様々な面からリアルな「長野県」の姿を発信することを心がけました。
取材を通して出会う声は、長野県への移住をすぐさま肯定するものだけではありません。
「別に地域のことが好きで移住したわけではない」、「いきなり田舎に移住しないほうがいいよ」といった移住のリアルな声についても取り上げることを意識しました。
(住んでいる地域を)好きになる必要なんて、全然ないです。僕は、住んでいる所を離れたときに、初めてその街のことを客観的に見られるようになると思っているんです。だから松本にいるときには、松本のよさってわからないんじゃないかな。引っ越したときに初めて、「松本ってこういう街だったな」と言えると思っています。
「『松本のことは全然好きじゃない』藤原印刷三代目が語る、移住先で“居場所”をつくる方法」より
お相手(パートナー)の出身地にこだわりはないんですけど、ずっと地元を出たことがない人だと価値観の違いが心配ですね。都会と長野のよさの両方を知っているか、長野だけしか知らないかの違いは大きそうだなって気がする。
「『地元は好き、でも戻れない』上京した女性たちが長野に帰りたくても帰れないワケ」 より
移住は住む場所だけでなく、働き方・コミュニティなど、人生を大きく変えるもの。「とにかく移住してください!」というメッセージよりも、SuuHaaで長野県をあらゆる角度で発信し、気になったら移住に向けた1歩を踏み出してもらうことこそ、大切だと考えています。
多くの人と土地に出会い、取材し、1つ1つの記事をチームで形にする度に、長野の知らない魅力と、新たな側面に触れました。
これからも、多くの県内外の人々に長野の空気を届けていきます。
この『SuuHaa』がどのようにして立ち上がり、その名前にどのような思いが込められているのか……といった話は昨年3月のイベント時に話をしました。よかったら、イベントレポートをご覧ください。
▶︎「行政っぽくない」サイトはいかに生まれたか? SuuHaa誕生秘話【イベントレポート】
「長野県に移住したい」人の資料請求が、1年間で約470件
長野県への興味・関心を持ってもらいたい。そう考えるSuuHaaは、記事を読んでくれた方々の「一歩先の好奇心」にも期待していました。
実はSuuHaaの記事では、どの記事の中にも「移住したくなったら」という看板を掲げた仲間たちがひっそりと佇んでいます。
記事を読んで「長野に移住したいな」と思ってくれた人がここをクリックすると、移住関連資料が請求できる仕組みです。
多くのWEBメディアは、メディアづくりのゴールとしてPV(ページあたりの閲覧数)を掲げます。記事がどれだけ読まれたのかを表す数字が、そのメディアの価値を決めていることも少なくありません。
しかし、SuuHaaではメディアのゴールの1つを「資料請求の数」に設定しました。
この請求フォームからいただいた資料請求の数は、全部で470組(2022年3月末までの計測)。
この数を見て、感じる印象は人それぞれかもしれません。ただ、これほどの数の方々が、長野県への移住を検討してくれたのだと思うと嬉しくなります。
そして、サイトの評価といえばもう1つ。
WEBメディア『SuuHaa』は、2021年度のグッドデザイン賞に選ばれました。
審査の評価を一部引用します。
一貫したコンセプトが感じられる魅力的なウェブサイトである。個性的なイラストやアニメーションに導かれるようにコンテンツが配置されており、最後まで読んでみたくなる工夫が随所に散りばめられている。一つ一つの記事も充実しており、地域の方々のリアルなメッセージの数々は読み応えがある。
WEBメディア [スーハー] | 受賞対象一覧 | Good Design Award (参照2022-4-15)
やったね!!
編集部おすすめの公開記事
多くの方々の協力を経て、つくってきた記事の数々。
「編集部のおすすめ」を聞かれれば、「全て」と答えたいのが正直なところです。
1周年を振り返る今回は、その中でも特に反響の多かった3つの記事をお伝えします。
長野出身の女性3人による、移住をめぐる座談会
開催した座談会は、長野に帰りたい理由も、帰りづらい理由もフラットに語っていただく時間に。長野県庁の方から、「あそこ(座談会)に入りたいくらいリアルなんです」との感想をいただくほど、幅広い意見が飛び交いました。
「男性バージョンも読みたい」という声も上がったので、続編が作られる機会もあるかもしれません。
長野の企業『藤原印刷』三代目社長のインタビュー記事
「松本は好きじゃない」というキーワードを残すかどうか、編集部でも悩んだ記事。取材対象者自身の意志で「残したい」と言ってもらったことから、この記事タイトルになりました。
記事を読んでいただければわかる通り、刺激的な言葉の裏には、「適切な距離を保って、地域と関わり続ける」という気概があります。藤原さん自身が地域との関係性を大切に育んでいるからこそ、公開することができた記事だと思っています。
「離れたときに、初めてその街のことを客観的に見られるようになる」という言葉に、多くの方が共感してくれたようでした。
●長野の"暖かい暮らし"を実現する断熱材の記事
自身も移住者である編集部メンバー・飯田が最も推していたのがこの記事。
「東京から長野への移住を決めた時、『家賃も安いし、自然も多いし、長野に住むなら寒さには目を瞑らないとしょうがない』と思っていました。ただ、それが先入観だと気づかせてくれたのがこの記事なんです。断熱材のことをしっかり知って、家に導入すれば、冬は暖かく夏は涼しい暮らしが可能だとわかりました」。
ーーSuuHaa 編集部 飯田
今後も、長野の姿を知るきっかけになるような記事をつくり続けていきます。
SuuHaaの影響も!10人以上の長野へ移住を決めた人たち
SuuHaaが立ち上がってから、この1年の間にも何人もの方々が長野に移住をしてくれました。今回は、編集部が出会った移住者・移住予定の方々にアンケートを実施。長野移住後の生活と居心地に関する声を、お届けしていきます。
①くろやなぎてっぺいさん(東京都小平市→長野市三輪)
職業:企画と映像と音楽
Q 移住のキッカケや、決め手になった事柄についてお教えください。
友人が企画してくれた長野ツアーで、長野のポテンシャルを死ぬほど味わって1日半で落ちました。持つべきものは友達とポテンシャル。
Q 移住した感想をお教えください
大満足しています。理由はたくさん。
1:自然との距離、東京都の距離がちょうど良い!
2:大衆浴場が山ほどある!
3:人口密度が心地よい!
4:面白いおじいちゃん、おばあちゃんが多い!
5:横断歩道で車が停車してくれる!びっくり!
6:みんな優しい!
7:ラーメン店に座敷がある!
8:野菜と米がうまい!
9:雪の上を歩くの瞑想的で楽しい!
10:長野に帰ってくると自然と深呼吸したくなる!
②大宮 大奨さん(神奈川県横浜市→松本市会田)
職業:振付家、ダンサー
Q 移住した感想をお教えください
これから松本市に引っ越しますが、家族的にはより良い環境を自分たちで開拓して冒険していく感覚はやはりとても興味深いですし、大きな土地で自由に好きな事を組み立てていけるというところはかなり魅力的です。ありきたりな情報が溢れる中自分達の好きと言えることを見つけていくことは人生においてとても幸せだと思っております!
③飯田 雄平さん(東京都杉並区→長野市)
職業:映像ディレクター
Q 移住のキッカケや、決め手になった事柄についてお教えください。
地元が長野市で、二拠点生活やUターンをしてみたかったため。
Q 移住した感想をお教えください
ついに長野に拠点を持ち、取組が始められるようになって嬉しい!
④内田 智也さん(埼玉県和光市 → 上水内郡信濃町)
職業:自営業
Q 移住した感想をお教えください。
騒音が少なくなってストレスがかなり軽減された。家が広くなって仕事も暮らしも快適になった。今年は雪が多かったので、除雪はそれなりに大変だった。
妻の感想:ご近所さんを含めて、信濃町全体が移住者に対してウェルカムな雰囲気で安心した。想定はしていたが、光熱費やガソリン代は都心部よりもかかる。
⑤これから移住太郎さん
職業:IT企業経営
Q 移住のキッカケや、決め手になった事柄についてお教えください。
長野で遊びに行った友人宅がすごく良くて、勢い余って土地を購入してしまいました!完全な移住ではなく、リモートワークの拠点として別荘を建設予定です。
Q 移住した感想をお教えください。
まだこれからなのですが、会社がリモートワークになったこともあり週の半分くらいを長野で住もうかなと思っています。
土地を探したり、建築士さんと打ち合わせで長野に何度も訪れているのですが、長野駅は東京から約1.5時間とアクセスもよく、駅周辺にカーシェアも多いので、とてもめぐりやすいです。
建物が完成したら、友人や会社の人たちをたくさん招待して長野の自然で遊びたい〜!
⑥石田 哲大さん(東京都世田谷区→塩尻市)
職業:会社員/ライター
Q 移住のキッカケや、決め手になった事柄についてお教えください。
約3年前のイベントで塩尻市に関係人口的に通うようになり、コロナ禍がはじまったタイミングで長野移住を検討。WEBメディアによる情報の豊富さ(移住後のイメージのしやすさ)に加えて、「おためしナガノ」に採択されたことが決め手となり移住しました。
Q 移住した感想をお教えください。
良かったこと◎
・街がコンパクトで公共施設が充実しており、リモートワークするうえで必要十分
・車を30分ほど乗り回せば、松本にも諏訪にも行ける。アクティビティの幅がググッと広がる
・「本当に田舎?」というほど色々な人が出入りする、風通しの良いコミュニティがある
・パンが美味しすぎて、「スイート」のパンが主食になる。本当にお世話になってます。。。
反省していること△
・人間は20分以上の移動に腰が重くなる。自宅から20分圏内に気分転換できるスポットがあること大事(できれば徒歩圏内)
・「田舎でリモートワーク」は一応成立するが、平日日中リモート会議詰める→夜19時過ぎに終わり→お店がどこも空いていない(遠くの飲み屋は車じゃないと行けない)の連鎖で、気をつけないと仕事漬けの不健康な日々に…
・冬の長野はとにかく寒い…!断熱こそ正義。コタツから出れなくなります。家探しは断熱性能を要チェック✔︎
⑦西山 武志さん(東京都目黒区→松本市)
職業:ライター
Q 移住のキッカケや、決め手になった事柄についてお教えください。
キッカケは取材で松本に来る機会があったこと、周りで長野県への移住が増えていたこと、知人にSuuHaa関わっている人がいて推してくれたこと、などなど。決め手は「水」でした。
Q 移住した感想をお教えください。
松本駅周辺、めちゃくちゃ移住初心者向きだなって感じています。都心にはない自然の豊かさと、都心に引けを取らない全方位的な文化度の高さが共存している気がします。買い物に困ることもなし、むしろ東京に住んでいたときより狭い範囲で何でも揃うかも。あと、本当に水がいいです。水のよさが生活の水準をグッと底上げしてくれています。菊の湯の水風呂は飛ぶぞ。
⑧パッシュ 遥子さん(東京都台東区→長野市)
職業:個人事業主・会社員
Q 移住のキッカケや、決め手になった事柄についてお教えください。
子育てするなら東京以外と漠然と考えていており、サラリーマンを辞めたころからどのように働き、どのようにこれから生活したいかを考えた時、気候変動問題や癒しという点でも夫婦ともに関心のある自然環境のあるエリアは絶対でした。そこに都内の仕事を引き続きできる新幹線アクセスなども足すと、夫の母国スイスに似ているところがある長野は必然的に候補に入ってきました。その中でも、長野に移り住むからには、その地域と都心をつなぎ、互いの共創を促し新しい時代に必要とされるソリューションや事業がたちあがっていくことを通し、「社会をよくしたい挑戦者」を増やすことにミッションを置いている私にとっては、その同志となる「人」の発見が大事でした。
銀座NAGANOのアンテナショップ→地元のテレビ局の取材→市役所の移住相談窓口→地元IT系ベンチャーなどを経て、こんな新しいことや挑戦をポジティブに捉える人達がいれば長野で何か起きないわけはない。BiotopeやSuuHaaのデザインやコンテンツなどもみて、センスを感じます。一緒に地域を作っていきたいと思いました!
⑨藤谷 正さん(東京都渋谷区→長野市)
職業:会社員
Q 移住のキッカケや、決め手になった事柄についてお教えください。
東京へのアクセスが良いこと。周囲に自然が豊富なこと。近年の門前エリアの変化など、新しい文化が生まれる土壌があること。
Q 移住した感想をお教えください
食住を中心とした生活環境、週末のアクティビティのアクセスのしやすさなどバランスがとてもいい。首都圏からの移住者が求める、仕事と、生活の両立がとても実現しやすい場所なんだと思った。
⑩緑川 正樹さん(東京都品川区→長野市)
職業:Web制作
Q 移住のキッカケや、決め手になった事柄についてお教えください。
コロナ禍でリモートワークが主となった為、週一で都内に通えて日々の暮らしが楽しくなりそうな場所を探していました。
移住先としての人気が高いという理由で長野県について調べた際、アルプスの写真が掲載されていて「日常生活でこんな山が見られるなんて素敵!」と一目惚れしてしまいました。
移住前に長野県内をぐるっと周ったのですが、初対面にも関わらず自宅に招いて頂き、家賃や近隣施設などのリアルな情報を教えて頂くなど、とても親切にしてくださる方がいたのも印象深いです。
Q 移住した感想をお教えください。
自然が豊かで楽しい!
飯山市の菜の花公園や信濃大町の木崎湖、戸隠のキャンプ場などに行きましたが
いずれも景観が美しく、お気に入りの場所になりました。
自宅の窓から見える稜線も新鮮で時間や天気によって雰囲気が変わるのもまた面白いです。
長野-東京間が新幹線で90分なのですが、仕事をしているとあっという間に着いてしまう印象で今のところ移動は苦になっていません。
⑪森 康平さん(東京都調布市→須坂市)
職業:フリーランス
Q 移住のキッカケや、決め手になった事柄についてお教えください。
仕事を辞め独立したため
Q 移住した感想をお教えください。
目的を持って移住してきた個性的な人たちと知り合えて楽しい。ウェルカム感に感激。
WEBメディアだけでは移住者は増えない?2年目に向けての覚悟
SuuHaaをはじめて1年が経ちました。「移住」は、住む場所だけでなく、友人や子供の学校など人生を大きく変えるものです。だからこそ「長野県はいい場所ですよ〜」という情報発信ではなく、「ここなら住んでもいいかも」と思ってもらえる多様な切り口で情報発信を続けてきました。
ただSuuHaaは「入り口」に過ぎません。1年を振り返ると、一緒にローカルな酒場を飲み歩いたり、相性の良さそうなコミュニティを紹介したり、現地での案内が移住検討者の背中を押すことにつながっていました。SuuHaaの閲覧者が増えれば、移住者が増えるのかというと、必ずしもそうではないはずです。
十人十色の理由がある「移住」。2年目は、長野県への移住を考えている人たちの最高の受け皿になれるよう、もっと県内でも仲間を増やしていきたいと思っています。ぜひこれからもSuuHaaのことをよろしくお願いします。
ーーSuuHaa編集長・藤原正賢